2010.11 鷹ノ巣山登山(1)


夢のような雲取山テント泊登山を終え、地上での生活に戻ってほどなく、日帰り登山専門の友達と山へ行くことになりました。
「どの山に行こうか?」
そう聞かれた時、雲取山の余韻が今なお残る頭には、なかなか新しい山の名前は浮かびませんでした(苦笑)
ですがその時、雲取山~七ツ石山の石尾根縦走路に立てられていた指導標のことをふと思い出したんです。
「あの素晴らしい縦走路をずっと歩いていけば、あの指導標に書かれていた山までたどり着けたんだなぁ・・・」
私はちょっと考えて、友達にこう提案しました。
「奥多摩の鷹ノ巣山にしない?ついこないだすぐ近くを歩いてきたんだけど、あの尾根道から見た景色が忘れられなくて、さ。」
こうして当日の早朝。私たちは東日原バス停近くの駐車場に車を停めました。
少し歩くと駐在所があって、ここで登山届を提出します。
交番にはよく、「本日の交通事故発生数 1件」とか書かれたボードがあるけれど、ここにはそれの代わりに
「本日の熊出没数 ○○山 ○件」
などと書かれた黒板がありました

心配になって駐在さんに尋ねると、鷹ノ巣山方面は熊は大丈夫とのこと。(近隣の山には出てるみたいだけど

また、前日に山頂付近では少し降雪があったようですが、今日であれば登山に支障はないだろうとのことでした。
駐在さんに送り出して頂き、いよいよ登山口へ。
里の舗装道から看板に従って階段を下りていきます。

この看板の裏手に、山並みから鋭く突き出すようにして聳える特徴的な大岩の姿が見えています。これが稲村岩。

今回の鷹ノ巣山登山では大好きな石尾根を通るルートも検討していたのですが、最終的にはこの稲村岩にも登ってみたくて、「稲村岩尾根」ルートでピストンすることに決めました。
どうやら、この尾根が奥多摩随一と言われるほどものすご―――く急らしいんだけど

さて、登山口の看板から階段を下りた私たちは、少しぬかるんだ細道を下っていきます。

するとすぐに、橋が現れましたー。

橋からは、紅葉した木々を見下ろすことができました。キレイだなぁ


そして橋を渡り切ると、いよいよ本格的な登山開始!


・・・と、その前に

今だから言いますが・・・私、この橋を渡る時に何者かのフンを踏んでしまいました

犬・・・だと思いたい。熊とは絶対に思いたくない!!(苦笑)
こうして、登山開始直前にテンションは激下がり

ここから山頂まで、稲村岩尾根の急登に耐えて身体だけでなくテンションも引き上げていかなければなりません

なかなか大変な1日になるだろうな・・・と、橋を渡り切ったところにあった水たまりで足踏みしながらしみじみ思うのでした(苦笑)
それでは、気を取り直して出発です!

こうして歩き始めた登山道は良く整備されていて、はっきりしていました。
一面に落ち葉が厚く積もって、ふかふかの感触。晩秋の静かな山の雰囲気が漂っています。

しばらくは沢沿いの道を進むのですが、登山道や斜面上では大小の岩がしばしば目につきました。
「鷹ノ巣山 対岸へ渡る」と書かれた看板が置かれていた辺りでは、こんなに迫力の岩の光景が!

それから沢沿いの細道を登っていきます。こういう雰囲気の道がすごく好きなので、なんだかワクワクしてきますね~


沢の流れもすごくキレイ!テンションもどんどん上がってきましたよ~(笑)

その時、裸になった木の枝を透かして、巨大な岩峰が姿を見せました。
えっ・・・!!あれが稲村岩なのー!?


その姿は迫力に満ちていて、登山口から見上げた時よりも遥かに大きく感じました。
「でかっ!あれに本当に登れるのーっ!?」
「なんか遠近法を完全無視してる感じだよね・・・」
私たちは驚きの声を上げながら、さらに登っていきました。
うーん、それにしてもだいぶ傾斜のきつさが目立ってきたような

この辺りの紅葉は終わりかけのようでしたが、一部に残っていた黄葉の木々が私たちを励ましてくれました。
こんな雰囲気ある橋を渡るのも、ちょっとした楽しみなの

テンションだいぶ上がってきましたよー(笑)

そして、息が上がってきたところで、数組の登山者が休憩している場所に出てきましたー。
そこに立てられた指導標には、「稲村岩」の文字が。

いよいよ、ここから稲村岩へ。
先ほど感じた「本当に登れるの?」という疑問の答えを、確かめてきます

【次回へ続く】
2010.11 鷹ノ巣山登山(2)
鷹ノ巣山の頂上を目指す稲村岩尾根ルートで、稲村岩への分岐にぶつかった私たち。
ここから稲村岩へは、登頂ルートを外れて片道15分ほど「寄り道」する形になります。
指導標の示す稲村岩の方角に目をやると、これまでの登山道とは一変、ごつごつとした岩が盛り上がっているのが見えています。
前後して登山者の姿が何組か見られましたが、この奥多摩随一とも称される急登の途中で、「寄り道して岩登りをしていこう」などと考えるのはごくごく少数派のようでした(笑)
私たちは指導標の脇でダブルストック(LEKI シーヴァアンチショック)をザックにしまうと、稲村岩に向けて歩き始めました。
道は予想通り岩がちになり、両手両足を使って登るような場所が出てきます。

この岩場は「極めて困難」というほどではないものの、「あぁ、ボルダリングをやってて良かったなぁ」って思う箇所もありました。
私はボルダリングを本格的にやっているわけではなくて、ほんの数回ジムに行ったり、アウトドアショップで講習を受けたりした程度なので技術は全く身に付いていないのですが

こうして15分ほど登り進めたところで、稲村岩のてっぺんに到着しました!
「本当に登れるのかなぁ?」なんて疑問に思っていた、このとんがり岩。
てっぺんには小さな祠が建てられていましたー!


ですがこちら、人があまり入っていないのか、生い茂る低木に今にも埋もれてしまいそう

ここからの景色も、木々が生い茂っていて下の方までは見ることができませんでした。
その代わり、この少し手前の岩場からは鷹ノ巣山方面が広く見渡せました。
青空に映える晩秋の山並みが実に素晴らしいの


こうして稲村岩からの眺望を楽しんだ私たちは、再び鷹ノ巣山登山を再開すべく分岐へと戻りました。
戻りもやっぱり険しい道なので、慎重に・・・


分岐へ戻ってホッと一息つくと、私たちは再び山頂目指して登り始めます。
しかーし、早速の急坂がっ!!


この先は特に、急な登りが畳み掛けるように続いていきました。
よく登山をしている時に、「うわぁ、急だなぁ」って思う坂に出会うことがありますよね。だけど普通は数分登れば、一旦傾斜が緩んだりすることが多いと思います。
ところがこの稲村岩尾根は、「急だなぁ」と思うような傾斜の坂を登り切ると、目の前にさらに急な坂が・・・というようなことが延々と繰り返されるんです(笑)
当然息は上がり、心臓はバクバクしてきます

だけど、こういう登りは嫌いじゃないんですよね。きつければきついほど、頭の中から余計なものが消えていって山と深く向き合える気がするし、登り切った時の喜びや感動も大きくなるように思うから。
だから、私自身はこの急坂に苦しみながらも、内心かなり楽しんで登っていたんです(笑)
むしろ、一緒に登っている友達が、あまりのきつさに「もう山はいいや」って言い出さないか、そのことばかりが気になってヒヤヒヤしていました

傾斜はきついけれど、明るい尾根道にはふかふかの落ち葉が敷き詰められていて、とても雰囲気がいいです

さくさく、かさかさ、小さな音を立てながら足を進めていきます。

皆さんにもちょっとだけその感覚を楽しんでもらおうと、動画も撮ってみました。よろしければ歩いているつもりになってご覧下さい

[広告] VPS
標高が上がってくるにつれて、道はどんどん明るく開けてきました~。
空の青がどんどん近付いてきて、もうすぐ手が届きそう!

とっても気持ちのいい晩秋の道だなぁ。来て良かったなぁ

そんなことを思いながら登っていくと、あるところから急に道の様子が変わってきました。
「・・・あれっ!?


雪だ!!
登山道脇の斜面や草木に、うっすらと白い化粧が施されています。
ついさっきまで秋の道を楽しんでいたのに、急に冬の風が吹き込んできた感じ。
とはいえ、登山道上に積雪があるわけではないので大丈夫・・・かな。
こうしてたどり着いたのは、「ヒルメシクイノタワ」。

変わった名前だけど、「ここまでずっと急な坂を登り続けてきた人たちが、ここでちょっと休憩してお昼ご飯を食べたくなるような場所」って言われると妙に納得してしまいますね(笑)
私たちはもうちょっと頑張って、山頂でお昼にしたいと思います!
ところが、ここからが大変でした・・・

日当たりが良くないのか、ついに登山道上にも数センチの積雪が現れ、一面真っ白な雪道になってしまったんです。
ホラ、"先行者"の足跡もこんなにくっきり


融けたり凍ったりはしていない新雪だったので、普通の登山靴でも問題なく歩けましたが、スリップしないように慎重に進む必要がありました。
ここまでかなり体力を使ってきましたが、今度は精神力も消耗することになるとはっ


その時、前方が明るく開けて、その先には青い空と白い雲が見えるばかりになりました。
前を行く人々が次々とシルエットになって、まぶしい光の中へ消えていきます。
もしかして、あの先に待っているのは・・・自然とペースが上がります。

そして、ついにたどり着きました!
秋と冬を越えて、急坂と大岩を越えてやってきた、鷹ノ巣山頂上~!



素晴らしいお天気の下、達成感もひとしお・・・なのですが・・・
風がめちゃめちゃ冷たいんですけどっっ!!

【次回へ続く】
2010.11 鷹ノ巣山登山(3)
稲村岩尾根の急坂を登り続けて、ようやくたどりついた鷹ノ巣山頂上。
ここまでの行程の大半は樹林帯だったのですが、山頂付近は景色がどーんと開けていました!

先日の雲取山登山の時に比べると少し霞んでいるようですが、実に気持ちの良い見晴らしです


しかし・・・これだけ開けていると、風当たりもかなり強いわけで

真冬のような冷たーい風が、真正面から吹きつけてきました



うう、寒い。身体が冷える前に温かい食べ物を!と、急いで山ご飯を作ります。
今回は赤岳登山の時に作った野菜スープにスキムミルクをプラスして、あっさり系のクリームスープにしてみました~


私たちは目の前に広がる景色を眺めながら、出来上がった温かいスープを食べました。
うん、お腹の中がぽかぽかあったかくなって美味しいっ

ここからは雲取山と同様に、富士山がばっちり見えるはずなのですが・・・
今日の富士山はどうやらシャイなようです(苦笑)
この写真、雲の奥に富士山がいるんだけど、分かるかなぁ?

スープを食べ終わる頃になると、指先や顔がかなり冷えてきて、ぶるっと身震いが出るようになりました

寒くてあんまり長居はできなさそう。私たちは荷物をまとめて立ち上がりました。
山頂に立てられた指導標には、石尾根縦走路の文字が刻まれています。

この素晴らしい尾根道は雲取山から七ツ石山を越えてここ鷹ノ巣山まで、そしてここから六ツ石山を越えて奥多摩駅まで遥かに続いているのだそう。
うーん、楽しそう!だけど、その楽しみは今度に取っておこう

こうして私たちは、再び稲村岩尾根へ向かいます。
山頂を後にする時、ふと振り返るとそこには水墨画のように折り重なって続いていく山並みの景色がありました。

やっぱり、私はこのエリアから見るこの景色が好きだなぁ

下山を始めてすぐに、道はびっしりと雪に覆われました。
登りの時も結構気を遣ったのですが、下りはさらに大変



念のために軽アイゼン(エバニュー 巾調節式6本爪アイゼン)と、友達用に簡易の滑り止めを持参していたのですが、距離もそれほど長くはないし友達も大丈夫そうなので、そのまま慎重に下ることにしました。
思えば、この積雪の下りは今朝の急登以上にヒーヒー言っていたかも(笑)
それでも、冬枯れの森から見上げる青空に心癒されます。
樹林帯に入って風も落ち着いたので、身体は随分楽になりました!

そしてなんとか積雪区間を抜けると、季節が冬から秋へと逆戻りしたかのような落ち葉の世界が広がります。

ここから下界までは、思った以上に快適に進むことができました。
こーんなにまっすぐに伸びる道を、落ち葉をガサガサ鳴らしながら一気に下るんです!
これは楽しい



こうして耳がつんとするくらいどんどん高度を下げて行くと、前方に幻想的な光景が広がりました。
森の奥で低木たちが一面に黄葉していたんです。

木々の密度が高くなり、徐々に薄暗くなっていく森の中で、ぼんやりと浮かび上がる黄色はまるでイルミネーションのよう。
行きは登ることに必死で、こんなに素敵な光景が広がっていたなんて、気付きもしませんでした。
同じ道の往復でも、登りと下りでは違った景色が楽しめるんだね

こうして私は秋の山歩きを再び楽しみながら、ハイペースで下っていきました。
沢沿いの道では、こんなに雰囲気ある橋があったりして。

そしてようやく、巳の戸橋まで戻ってきましたー!
行きにこの橋を渡った時には、"とある事情((1)参照)"でテンションが低かったんですよね(苦笑)
そのせいもあってか、帰りに見たこの紅葉の方がより鮮やかに感じました


この後、私たちは細道を通って階段を登り、駐在所を経て駐車場まで戻りました。
これにて鷹ノ巣山登山、無事終了!
今回はスリリングな稲村岩への寄り道があったり、とてもハードな急坂が続いたり、山頂直下には雪道歩きがあったりして盛り沢山、濃厚な日帰り登山になりました。
そして、秋の景色を楽しみながら登っていった1,700mちょっとの山の上では、早くも冬の訪れを感じることになりました。
これからいよいよ、素晴らしい展望と雪のシーズンが始まります!
【終わり】
※自分用メモは後日更新予定です。