2015.08北アルプス表銀座~裏銀座テント泊縦走登山(7)【7日目:野口五郎小舎~烏帽子小屋(烏帽子岳)】
【2015.08北アルプス表銀座~裏銀座テント泊縦走登山】山行一覧
◆1日目:中房温泉~燕山荘(燕岳、北燕岳)
◆2日目:燕山荘~ヒュッテ西岳(西岳)
◆3日目:ヒュッテ西岳~槍ヶ岳山荘(槍ヶ岳)
◆4日目:槍ヶ岳山荘~双六小屋(樅沢岳、双六岳)
◆5日目:双六小屋~三俣山荘(三俣蓮華岳、鷲羽岳)
◆6日目:三俣山荘~野口五郎小舎(水晶岳、野口五郎岳)
◆7日目:野口五郎小舎~烏帽子小屋(ニセ烏帽子岳、烏帽子岳)
◆8日目:烏帽子小屋~高瀬ダム
登山概要・データはコチラ

■この日の歩行ルート
ルート詳細はコチラ
※この日はGPSの調子が悪かったようで、途中で切れてしまったようです

■今回のコースと所要時間
所要時間合計(テント設営撤収、食事、休憩等込み):約6時間35分
(行動時間)
※全体的に、細かい休憩などは含まれてしまっています。
野口五郎小舎(トイレあり)―【約2時間15分】→烏帽子小屋(トイレあり)―【約25分】→烏帽子岳分岐―【約20分】→烏帽子岳頂上―【約20分】→烏帽子岳分岐(四十八池方面散策約30分)―【約30分】→烏帽子小屋(テント泊)
■参考マップ
山と高原地図 35 鹿島槍・五竜岳 北アルプス
山と高原地図 36 剱・立山 北アルプス
山と高原地図 37 槍ヶ岳・穂高岳
山旅6日目で初めての山小屋泊まりをした私たち。
翌朝、かなり早発ちの団体さんがいらっしゃったようで、予定よりも1時間半ほど早く目が覚めました(笑)
元々ちょっとしたことで寝つきが悪くなってしまう性格なので、この日もあまりぐっすりとは眠れなかったのですが、こういう時は焦らないことにしています。
身体をただ横たえて、目からの情報を遮断して、何も考えずぼーっとしているだけでも身体や脳が休まると思うので、しばらくそうやって過ごしました。
そして予定の起床時刻頃にようやく布団から這い出して、身支度を整え、片づけを済ませたら荷物を持って小屋の外へ。
幸い空はすっきりとよく晴れていました。朝陽が眩しいです

私たちは近くの岩に腰掛けて、シリアルとパンを食べました。
簡単な朝食ではありましたが・・・この景色を目の前にして食べれば、どんなモノでも豪華で贅沢な食事に変わってしまいますね



さんさんと降り注ぐ陽射しを浴びて、頭と身体にもようやくエンジンがかかってきました!
そして・・・
「お世話になりました!

「気をつけて

スタッフの方々とそんな挨拶を交わして、私たちは小屋を後にしました

輝く山々、どこまでも広い青空。本当に気持ちの良い朝です。

気づけばこの山旅も7日目を迎えました。明日にはこの稜線から下界へと下ってしまうので、実質山の上を歩くのは今日で最終日。
早いなぁ・・・。3日目や4日目ごろは、「まだまだ先は長いなぁ」なんて思っていたのに。
最後の最後まで、しっかりと山を楽しまなきゃだね

少し進んだところで、先を歩いていた団体さんに追いついてしまいました。
ほとんど登山者さんのいないこの広い広ーい山の中で、敢えて行列する必要もないと思ったので、私たちはここで少し時間調整することにしました。
そしてポカポカ陽気の中、雄大な景色を眺めて30分ほど過ごしました

気持ちがいいなぁー、このままもう一眠りしてもいいぐらい。(笑)
こういう時間にも幸せを感じますね


見渡す限り誰もいなくなった頃に、私たちはザックを背負って再び歩き始めました。
進行方向の稜線が遠くまでよく見えていて、とっても気持ちがいいです

大岩がゴロゴロしているようなところもありましたが、とても楽しい道が続いていきました。
やがて、「←展望コース お花畑コース→」と書かれた分岐にぶつかりました。
えっ!?それって、究極の選択だよ!

一度戻ってきて両方のコースを歩こうかという話も出ましたが(苦笑)、ここまでの道でも既に素晴らしい眺めを楽しむことができたので、今回はお花畑コースで行くことにしました

こうして歩き始めたお花畑コースはトラバース道で、日当たりの良いところでした。
早速お花がお出迎えしてくれましたよー


コマクサも、ホラ


このコースはお花畑だけでなく、槍ヶ岳などの眺めも楽しむことができました

やがて展望コースと合流すると、ゴツゴツした三ツ岳(本峰)のピークを回り込んで、ぼこぼこと白っぽい岩が目立つ道を進んでいきます。
すると突然登山道上に小鳥が現れたので急ブレーキ!!しばらくぴょこぴょこ跳ね回る小鳥の様子を観察して楽しみました

こんな風に毎日マイペースに歩けるのも、時間にたっぷりと余裕があるからです(笑)
高山の夏山ならではのこの景色。本当にたまりません


そこからも、視界の大きく開けた素晴らしい道は続きました。
眼下には美しい色の湖(ダム)も。あれって高瀬ダムだよね?明日あんなところまで下るの?とびっくり

明日のことはちょっと心配だけど・・・それと同時に、今自分たちがどれほど高い場所にいるのかがよく分かりました。

やがて道は砂地の下りになりました。道の両脇に小石が並べられてキレイに縁取られていたのですが、これはこの斜面に広がるコマクサたちを守るためのものだったのかもと後で気づきました。

この坂を下った後は大きな岩がゴロゴロした道を進んでいきます。
だんだんと周囲に緑が増えてきて、その合間に池を見下ろすこともできました!
この辺りから烏帽子小屋のテント場は始まっていて、テント設営スペースが点在している中を小屋に向かって進んでいく形になるのですが・・・
そのテント場の整備のされ方がすごい!石庭のようだと言えば良いのでしょうか、石なども落ちておらず、各区画がとてもキレイに均されていたんです


小屋のスタッフさんたちがきちんと管理をして下さっているのだと思いますが、山の上でこれだけの美しいテント場を維持されるのはとても大変なことと思います。
本当にありがたいです

私は、今日はぐっすり眠れそうだなぁとワクワクしながら、小屋への坂を登っていきました。
そして、烏帽子小屋に到着ー!(って、写真は到着直前ですが


私たちはテントの受付を済ませると、先ほど通過したテント場まで戻りました。
実は先ほどテント場を通りながら、良さそうな場所をしっかりチェックしていたんです(笑)
この日もまだほとんどテントがなかったので、自分たちの気に入った場所に設営することができました!
テント設営が終わったら、サブザックを持って再び烏帽子小屋へ。
これから、この先にある烏帽子岳へ向かいます!
私たちは烏帽子小屋の前を通り過ぎて、その脇から烏帽子岳方面の登山道に入り、樹林帯を登っていきます。
背の高い木々が立ち並ぶ光景は久しぶりに見る気がして、なんだか新鮮な気持ちになりますねー。
やがて樹林帯を抜けると、目の前がぱぁっと開けて、真っ白な砂浜みたいになりました!

樹林帯から砂浜に飛び出すこの感覚は、まるで日向山登山の時のようです。

砂と岩とハイマツの道には、コマクサの姿も随所に見られました

なんだかコマクサの小径を散歩しているみたいで、とっても楽しいです

そこからハイマツに覆われた細道を登っていくと、ニセ烏帽子岳(前烏帽子岳)に出ました!
頂上の岩場には、岩に囲まれた祠などがありましたよー

ここからの景色がまた素晴らしいのです



左側、空に突き上げるような鋭い山容の烏帽子岳に目が釘付けになりました


実は、烏帽子小屋辺りからは烏帽子岳は見えず、代わりに見えている山がここニセ烏帽子岳なんです。
ニセ烏帽子岳も無数の白岩が突き刺さったような迫力ある山で、その上こんなにも眺めが良い、とっても素敵なところなんですよね

私たちは近くの岩場に腰を下ろして、しばらくこの景色を眺めて過ごしました。
それでは、そろそろ烏帽子岳へ!
ニセ烏帽子岳を過ぎると、道はいったん砂礫の下り坂になります。
この斜面もまた、コマクサの群生地でした

この辺りに白いコマクサが咲いていると噂に聞いていたので、くまなく探して見つけました!

ちょっとしおれ気味のようだけど・・・カワイイ


この先少し行ったところに烏帽子岳分岐があって、そこから烏帽子岳までは480mと書いてありました。
えっ、そんなにすぐ着くかなぁ?と思いながら、砂と岩の道を烏帽子岳方面へと進んでいきます。
近づけば近づくほど、その迫力は圧倒的なものになっていきました。
高く高く、鋭く鋭く、空へと伸びていく様は圧巻としか言いようがありません。

実は、当初の計画では烏帽子岳には登らず、この日そのまま下山するという案も出ていました。
それでも、この烏帽子岳の写真を見て一目惚れしたことから、時間をしっかり取って、ぜひお邪魔してこようと行程を1日伸ばした経緯がありました。
7日前に登り始めた時は、好天がいつまで続くか分からないし、途中下山する可能性も高いなと思っていたんです。
それが、ここまで元気に歩き通すことができて、しかも、青空の下に聳えるこの山の姿を、こうして見上げることができるなんて。
少しずつ烏帽子岳へと近づきながら、私は胸が一杯になりました。(写真も同じようなアングルなのに、何枚も撮ってしまいました

でも・・・こんなに険しい山、本当に登れるのかな??

こうして烏帽子岳頂上への登り口までたどり着いた私たち。
そこからは樹林の中の急登が始まりました。
ここは段差が大きくて、身体が小さい私にはかなりのハードな登り

しかも、道が狭いのですれ違いにも気をつけないと。この時はすれ違った登山者さんが1組だけだったので助かりました。
息を弾ませながら急坂を登り終えると、今度は鎖のついた岩壁がどーんっ!!


この岩壁、鎖で登る道のほかに、鎖は無いけどちょうど足を置けるように岩がえぐれてできている道があって、登りは後者を使いました。
それから、ちょっと怖い岩壁のトラバースなんかもあったりして・・・

頂上までの岩場には手がかりや足場などがきちんとあるので落ち着いて動けば大丈夫でしたが、それでもなかなかハードなところでした。
実は烏帽子小屋に着いてすぐ、電波のつながるところがあったので母にメールを送っていたんです。
「無事に最後の宿泊地に着いたよ!携帯の電波と電池があまりないから次は明日下山後の連絡になるけど、天気もよくて元気だから心配しないでね。」
"心配しないでね"と伝えた後に、こんなに危険なところに来てしまった・・・連絡するのちょっと早かったかなー?なんて思いながら登っていました(苦笑)
こうして、最後は大岩をよじ登って、烏帽子岳に無事登頂!!


なにやら標柱がものすごいところにもたれかかっています


この写真の尖った大岩に、裏側から回って少し登ってみました。
そこからの景色がこちら。ホントに尖ってるー!!


ここは高度感がすさまじくて危ないので、景色を見たら早めに、慎重に下りました。
そして先ほどの岩壁を、今度は鎖のついている道の方から下り、段差の大きな樹林帯の道をなんとか下りきって分岐まで戻ってきました

このままテント場まで戻ってもいいのですが、先ほど小屋で受付をしていた時にレンジャーさんらしき方と少しお話をしたんです。
その時に、余裕があれば四十八池の方を散策するのもいいですよ、とオススメしていただいていたんです。
テントも張って、烏帽子岳に登ってきてもまだ午前中という状況だったので、四十八池方面へ少し足を延ばしてみることにしました!
というわけで、ここ烏帽子岳分岐から小屋方面ではなく、南岳方面へと進んでいきます。
先ほどまでの白い砂浜越しに眺める烏帽子岳も美しかったですが、こうして緑の海から突き上げるような姿もまた素晴らしいです


・・・と気持ちよく歩き始めたのですが、分岐から先の道は幅が狭かったり、岩の大きな段差があったりと荒れた雰囲気のところが出てきました

時には積み重なった木の枝を乗り越えるところも。ホントにこの道大丈夫かな?これは「散策」という雰囲気ではないような・・・(苦笑)
急に足取りも重くなってきて、ペースも上がらなくなりました。
どうしようかな・・・と思っていた頃に、1つ目の池を発見!
でも、ここ最近はあまり雨が降っていないせいか、水の量はかなり少なくなっていました。
そこからさらに進んで、コマクサの庭園みたいになっているところを抜けると、2つ目の池も現れましたー

まるで楽園みたいなこの景色!なんだかスイスでハイキングしているような気分になりますねー

これはとっても楽しい!

この先にも池が点在しているようで、時間をかけてゆっくりと散策するのも楽しそうでしたが、今回はここまでにしました

というのも、なんだか急にどっと疲れが出てしまって・・・


この7日間ずっと、山を歩き続けてきて、危険な場所をいくつも乗り越えて計画最後の山へ無事に登頂を果たせたこと、
後はテントで最後の夜を過ごして、翌日には街へ下ること、
そんな状況から、今まで無意識の内に緊張状態にあった心と身体が、ホッと緩んでしまったのかもしれません。
それに加えて、夕べの寝不足も少し影響しているのかも

こういう時は無理しないで、きちんとテントまで自力で戻ることを最優先にしよう

というわけで、私たちは来た道を引き返し始めました。
思った以上に疲れが出ていたようで、大きな段差をちょっと乗り越えるだけでも足が止まりそうになります。
時間はたっぷりあるので、焦らずにこまめに休憩を取り、ここまで温存していたアミノバイタルゼリー スーパースポーツや水分を補給しながら、ゆっくりと進んでいきました。
そしてなんとか烏帽子岳分岐まで戻ってくると、そこからもゆっくりじっくりと登っていき、ニセ烏帽子岳の岩場で景色を眺めながら再び休憩ー。
烏帽子岳の美しい姿を眺めながら、「最後にこんなに素敵な山に登らせていただけて、ホントに良かったなぁ

それから、白砂とハイマツの道を下っていき、樹林帯を通り抜けて烏帽子小屋へ無事戻ってきましたー!
時刻はまだお昼時。そういえばご飯がまだだったなーと気づいて、小屋で食事を頼むことにしました

そしてカレーライスを注文したところ・・・出てきた料理にびっくり!
大きな具がゴロゴロ入っていて、まさに下界のカレーそのものではないですか


標高2,500mを超えるような場所で、こんなにも美味しいカレーが食べられるとは

こうして満腹になって、テントへ戻ろうと席を立った私は、自分がすっかり元気になっていることに気づきました。
あれっ・・・さっきまでのヘロヘロ具合は一体どこに?
もしかして私、お腹が空きすぎてたのかもしれない・・・(苦笑)
テントに戻ると、ちょうど木陰になっていたようでテント内も過ごしやすい温度になっていました。
私は荷物の片付けをした後に、テントの入口を開けて涼しい風を取り込みながら、ゴロゴロ、のーんびりとお昼寝を楽しみました

あぁ、快適快適!
持ってきていた食材とガスカートリッジがほぼ無くなっていたので、夕食はまた小屋に行ってカップラーメンを頂きました!
今回は本当に各山小屋にお世話になっています。山小屋のありがたさを感じます

小屋の前はお花畑になっていて、こんな眺めも楽しめましたよー

すっごくキレイ




夕食を済ませた私たちは小屋で水を購入し、いったんテントに戻ったのですが・・・すごい数のブヨに取り囲まれてしまいました

こういう時はやっぱりヘッドネット(頭からかぶる虫除けのネット)が大活躍ですねー

テントでしばらくゆっくりして、19時過ぎにトイレを借りるため再び小屋へ向かうと、ブヨはもういなくなっていました。
代わりにそこにあったのは、息を呑むような夕焼けと雲海の織り成す景色。

あぁ・・・。
思えば一週間前、私は日常の世界から3,000m級の山々が聳えるこの世界にお邪魔しました。
それから、雄大な山の景色の中を、少しずつ、少しずつ前へと進んでここまでやってきました。
荷物の重さと陽射しの暑さでヘロヘロになったり、危険な岩場を慎重に乗り越えたり、身軽になって駆け回ったり、満天の星空の下でぐっすり眠ったり。
そんな山旅、山で過ごす時間も、もうすぐ終わりを迎えようとしています。
「お疲れさま」
そう山に言ってもらえた気がして、とっても嬉しくて涙が出ました。
ここまで無事にたどり着けたのも、ここにこうしていられるのも、山のおかげ、天気のおかげです。
そして道中私を励ましてくれた高山植物たちや雷鳥たち、出会った登山者さんたちのおかげです。
それから、美味しい食事や冷たい飲み物、休息の場を提供してくださった山小屋のおかげです。
他にも、他にも・・・感謝の気持ちは尽きません。
さぁ、明日はついに山旅最終日。
下山するだけとは言っても、明日下るのは日本三大急登とも言われているブナ立尾根、そう簡単には下らせてもらえないことでしょう

最後まで気を抜かず、山を目一杯楽しんで下山すること。そして笑顔で「ただいま」を言うこと。
登山の最大の目的を果たすため、今日はしっかりと休んで明日に備えます。
おやすみなさい!
【次回へ続く】
2015.08北アルプス表銀座~裏銀座テント泊縦走登山(8)【8日目:烏帽子小屋~高瀬ダム】
【2015.08北アルプス表銀座~裏銀座テント泊縦走登山】山行一覧
◆1日目:中房温泉~燕山荘(燕岳、北燕岳)
◆2日目:燕山荘~ヒュッテ西岳(西岳)
◆3日目:ヒュッテ西岳~槍ヶ岳山荘(槍ヶ岳)
◆4日目:槍ヶ岳山荘~双六小屋(樅沢岳、双六岳)
◆5日目:双六小屋~三俣山荘(三俣蓮華岳、鷲羽岳)
◆6日目:三俣山荘~野口五郎小舎(水晶岳、野口五郎岳)
◆7日目:野口五郎小舎~烏帽子小屋(ニセ烏帽子岳、烏帽子岳)
◆8日目:烏帽子小屋~高瀬ダム
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■この日の歩行ルート
烏帽子小屋~高瀬ダム。GPSの不調によりスタート直後に記録が切れてしまったので、ルートマップはありません。ごめんなさい

■今回のコースと所要時間
所要時間合計(テント設営撤収、食事、休憩等込み):約2時間55分
(行動時間)
※全体的に、細かい休憩などは含まれてしまっています。
烏帽子小屋(トイレあり)―【約2時間20分】→北アルプス裏銀座登山口―【約10分】→濁沢不動沢キャンプ指定地(トイレあり)―【約20分】→高瀬ダム
■参考マップ
山と高原地図 35 鹿島槍・五竜岳 北アルプス
山と高原地図 36 剱・立山 北アルプス
山と高原地図 37 槍ヶ岳・穂高岳
ついに、この日が来てしまいました。
山旅8日目、下山の日です。
私たちは昨日よりも早い時間に起きて、温かい飲み物とアマノフーズ フリーズドライ ふかひれ雑炊をいただきました。
身支度を整え、テントを片付けてパッキングを済ませると、私たちはザックを背負って烏帽子小屋へと登っていきました。
途中の一段上がったところにヘリポートがあって、見晴らしがよく携帯の電波も通じるので昨日から何度か立ち寄っていたのですが、この時も少し寄ってみることに。
すると、タイミングよく素晴らしい朝焼けの景色を望むことができました

顔を出したばかりの太陽から溢れた光が、雲海と山々を優しく照らしていきます。

高瀬ダムを挟んだ向かいには、餓鬼岳が聳えています。ちょうどU字型(『し』の字かな?)に歩いてきたので、表銀座方面の山並みと向かい合う形になるんです。
色んな思いがよぎりますが、今は最後まで気を緩めず、安全に下山すること、そして元気に帰宅することを心に誓います。
この美しい朝焼けが、山の上で過ごした8日間の素晴らしい締めくくりになりました。
本当に、本当にありがとうございましたっ!!

こうして私たちは烏帽子小屋まで移動すると、トイレを借りて準備を整えました。

さぁ、いよいよ下山開始!
私たちは小屋の前を通り過ぎて、その奥にある高瀬ダム方面の登山道へと入っていきました。

ここから、道はほとんど森の中になりますが、歩き始めて数分のところでいったん景色が大きく開けました

私たちはこの美しい山々の眺めを目に焼き付けてから、さらに下っていきました。

今回、北アルプス三大急登の合戦尾根を登り、日本三大急登のブナ立尾根を下るということで、この下りもかなりキツイだろうなーと覚悟していました。
実際に下ってみると、時々平らな所や少し開ける所もありましたが、大きな段差やハシゴ、階段が増えてきて、かなり足に負担がかかってきましたー

うーむ、ここを登ることになったらかなり大変そうだなぁ

それでも、この道はキツイだけのところではありませんでした。
森の雰囲気が素晴らしく、年季の入った立派な木の幹や、新緑のように優しく柔らかな緑が生い茂る様子に心奪われました


朝陽を浴びて気持ち良さそうな苔もいましたよー

おはようさーん


でもやっぱり道は急なのです。(苦笑)

花もあちこちに見られました。ついつい足を止めて見入ってしまいますねー


でも・・・しつこいようですが、やっぱり急なんです、道が。(苦笑)
足の短い私には段差の大きさがかなりこたえます


全体的に坂がきつかったため、ハシゴや階段が整備されている場所が多かったのはありがたかったです。
ただ、道幅の狭いところが多いので、登山者さん同士のすれ違いは結構大変そう

実はこの日、下るだけなのにかなり早く出発したのにはその辺りの事情もありまして・・・。
日程的に、この日は朝から大勢の登山者さんがこのルートを登って来られるだろうと予想していたんです。
この細くて急な坂道で、登りの方々の渋滞に巻き込まれてしまうと、少数派の下山者としては大変なことに・・・

というわけで、登りのラッシュが始まる時間帯や場所を予測しながら、自分たちはそのラッシュにぶつかるまでに、できるだけ標高を下げておきたいと考えていました。
焦らずに、でも道の状況が良いところではペースアップして、森の雰囲気や花などを楽しみながらもどんどん下っていった私たち。
こうして出発から1時間ちょっとは、誰もいない登山道を下っていくことができました

その後、ちらほらと登ってこられる方がいらっしゃり、道を譲っていたところ・・・そのうちどんどん、どんどん登ってこられる方の数が増えて、道が大渋滞になってきましたーっ!!

予想はしていたものの、その混雑具合は想像以上

やはり人気の高いコースなのですねー!
このきつーい坂をずっと登り続けてこられた方々のペースを乱さないよう、細い道の所々に退避ポイントを見つけては邪魔にならないよう端に寄り、道を譲っていきました。
それでも、1グループに道を譲ると、すぐ次のグループが続いているという状況だったため、私たちは全く先に進めなくなってしまいました

中には、疲れたので下りの人とのすれ違いのタイミングで少し休みたいなぁーという登山者さんもいらっしゃったので、そういう雰囲気を察した時には声をかけて先に下らせていただいたりもしました。
でも、このままだといつ下山できるか分からないなぁ

どうしようかなぁー、と考えながら、待ち時間はすれ違う方々に笑顔で挨拶とエールを送りつつ、辺りの花や木々を眺めて過ごしました(笑)


ううーん、さすがにこのままではヤバイかも

ということで、時々登山者さんが途切れるタイミングに、小走りで次の退避ポイントまで移動することにしました!
もちろん、大きな段差など危ないところは慎重に足を運びましたが、歩きやすいところでは忍者のようにシュタタタタッと移動して、人が来る前にササッと退避ポイントにはまる、の繰り返し。(笑)
十数キロの荷物を背負ってシュタタタタ、ササッ!とかやってる私はもはや野生児です(爆)
でもこれのお陰で、なんとか下っていくことができました

やがて、下の方から大きな沢の音が聞こえるようになってきました。だいぶ標高が下がってきたようです。
それからさらに進んでいくと、かなりの急斜面に鉄階段などがジグザグに設置されているところに出てきましたー!
わぁっ、これは急だよっ


手術を受けた方の足首があまり曲がらないのと、ここまでの下り続きで足がだいぶ疲れていたのとで、この階段は私にとってかなりの難所でした

ヒエエェー!!とか言いながら、一段ずつ何とか下っていきました。
そしてこのジグザグ階段を下りきると・・・すぐ近くに白い岩の転がる広ーい沢が見えてきました。
あれっ?この標柱に「登山口」とか書いてある・・・。

まさかとは思ったのですが・・・どうやら、予定よりも1時間は早く山を下りてきてしまったようです

途中のチェックポイントを見落としていたため、あと40分くらいは急坂を下るつもりでいたので、ちょっと拍子抜けしてしまいました

そして、広く平らな砂浜みたいなところを、とことこと歩いていきます。
この時点でもまだ、「あれ?ホントにもう登山口まで下りてきたの?」とか思っていました(苦笑)

そのまま進んでいくとキャンプ場にぶつかり、その先には長ーいつり橋がありましたー!

このつり橋を渡ると、今度はトンネルが。
これがまた長くて、しかも誰もいなかったので、歩いているうちにちょっとドキドキしてきました(笑)

そしてこのトンネルを抜けると、ぱぁっと景色が開けました!!
これまで過ごしていた山々の世界から、人間の世界へと戻ってきた感覚・・・そう、
高瀬ダムに無事ゴールしましたーっ!!



やったぁ!とトンネルの前でバンザイをしていたら、向こう側に停まっていたタクシーの扉が開いて、サングラスをかけた運転手さんが出ていらっしゃいました。
タクシーの手配はしていなかったのですが、たまたま待機されていたようで、車の横に立ってこちらを見ながら、私たちが来るのを待っている様子。
私たちは、エメラルドグリーンの美しい水をたたえたダムを眺めながら、タクシーの待つ方へ歩いていきました。
その時ふと、
「なんか・・・宇宙から地球に帰還した私たちを、ボスが出迎えてくれてるみたいだね」
「まさに!!ヘルメットを手に持ったらますますそれっぽい!!」
という話の流れになってしまい、何故かエアロスミスを歌いながらタクシーへと向かったのでした・・・(笑)
そしてボス、いやタクシーの運転手さんと
「どちらまで?」
「信濃大町駅まで行ってもらえますか?」
とのやりとりの後、大きなザックをトランクに積み込みました。
これで、8日間の山旅が終わる。
タクシーに乗り込む前に、私はもう一度来た道を振り返りました。

本当に・・・・・・ありがとうございました!

それから、タクシーの運転手さんから地元のお話などを色々と伺いながら信濃大町駅まで移動した私たち。
やっぱり車はすごいね、速いねー!

ここから大糸線で穂高駅まで30分の移動なのですが、待ちきれず駅でお蕎麦を食べてしまいました(笑)
あーっ、美味しい


そして電車に乗って穂高駅に降り立った私たちは、駅前で今度はアイスまで(苦笑)
あー、美味しいーっ


思いっきり自分を甘やかし、欲望に忠実に過ごしたのでした(爆)
その後、私たちは駐車場で車を回収し、しゃくなげ荘へ。
ここの温泉で8日間の汗と疲れをしっかりと流して、さっぱりしてから帰路に就きました。
そして、笑顔で「ただいま」を言って、この山旅を締めくくったのでした!

今回の北アルプス表銀座~裏銀座テント泊縦走登山は、こうして8日間の計画通りに無事歩き通すことができました。
もちろん、自分の力量でも無理なく楽しく歩き続けられるよう、計画にはかなりの工夫を凝らしましたが、それを実現できたのは、お天気のおかげ、山のおかげ、山で出会った山小屋や人々、動植物など、皆さんのおかげです。
皆さんのお陰で、私はいつものように自分のペースで、最初から最後まで自分らしく楽しんで山を歩くことができました

私は本当にラッキーでした。幸せ者でした。
ありがとうございました

北アルプスの、どこまでも続く大きな大きな山々の世界の中を、ゴマつぶみたいに小さな私が、小さな小さな一歩を積み重ねて歩いてきた道。
あの雄大な景色、涙の出るような夕焼け、可憐に揺れる花たち・・・他にも他にも、忘れることのできない出会いが沢山ありました

憧れの山への訪問を少しずつ実現している私ですが、山へ登れば登るほど、お邪魔したい山やコースがどんどん増えていきます。
今回初めて訪れた裏銀座方面は、すっかり大好きなエリアのひとつになりました。
これだから、山はやめられませんね!

今回の経験を通じて、多くの改善点も見つかりました。
これからも事故なく楽しい登山ができるよう、自分をもっともっと高めていきたいと思います!
【終わり】