2009.12高川山ひとり登山(3)

高川山ひとり登山、(1)(2)の続きです。

山頂で予想外の雪に降られた私。
荷物をまとめてレインウェアを羽織ると、山頂から南側へ一段下がったところにちょっと降りてみました。
ここからだと、眼下の景色をさらに近くに見ることができます。
ガスに煙る眼下の景色

立ち上るガスが辺りを「幻想」で包み込もうとしていたけれど、私は無事に地上の現実世界まで戻らなければいけません。
朝から感じていた「良くない予感」は、もしかしたらこの「天気の急変」のことかもしれないなぁ。

この時、富士山を見晴らす南側の天気はこんなにも悪くなっていたんだけど、北側はびっくりするぐらい晴れていたんですよね。
振り返ると・・・ホラ。
北側は晴天!
青空をバックに、シルエットになった山頂の標柱と、こちらを心配そうに見下ろすビッキーの姿がありました。
「雪も降ってきたのに、あなた1人だよ・・・早く下山したらどう?」
そう言いたげな顔で私のことをじっと見つめるビッキー。

「そうだね。うん、下山するよ!」
こうして私はビッキーに別れを告げて、来た道を戻り始めました。

・・・が!
あまりに顔が寒くて、歩いていられない
すぐに立ち止まって、首に巻いていたマフラーを外すと顔にぐるぐる巻きつけました。
これにサングラスをかけると・・・ギャハハハハ!!これはヤバイっ。
こんな変な格好、誰にも見せられないね(笑)

なんて思っていたら、背後からガサガサッと誰かが駆け下りてきたんです!
「ヒィィッ!!」と振り返ると・・・

ビ、ビッキー!?

「あなた、なんて顔してるの?」
と私に一瞥をくれた彼女は、そのまま私を追い越して、山道を駆け下りていきました。

そっか・・・ビッキーも今日は雪を避けて、どこか山の麓まで下りる予定なのかなぁ。
ビッキーに少し遅れて、坂を下り始めた私。
すると、少し先でビッキーが立ち止まり、林の中の何かに耳を澄ませているようなそぶりを見せていました。
そのまま歩き続けた私がビッキーの近くまで追いつくと、彼女は再びパッと走り出して、少し先でまた立ち止まる・・・
そんなことを数回繰り返すうちに、私の中に確信めいたひらめきが浮かびました。

「ビッキーは・・・私を送ってくれようとしてるんだ。」

この時のビッキーの姿を動画で撮りました。手ブレして見づらいのですが、よろしければご覧下さい
ビッキーが2回目に立ち止まった時、くるっと振り返って私の姿を確認してから再び走り始めている様子が分かるでしょうか!?(16秒目ぐらい)
[高画質で再生]高川山の犬、ビッキー
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やばいっ、これは楽しい!
ふりふりと揺れるビッキーの白いお尻を目印に、私は快調に山道を下りていきました。
やがて、男坂と女坂の分岐の前でぴたっとビッキーが立ち止まります。
「ビッキー、どっちに行くの?できれば女坂でお願いしますっ
そう呼びかけると、ビッキーはパッと左に身を翻して、本当に女坂の方向へ進んでくれたんです

わぁぁ、すごい楽しい~!!
私はビッキーにあれこれ話しかけながら進んでいきます。
どうしてここにいるの?どこで寝てるの?この生活は楽しい?・・・淋しくない?
ビッキーからの答えはもちろんないけれど、そうやって話しながら歩く道のりは、とっても楽しいものに感じました。
ビッキーが案内してくれます!


やがて、ちょっと危ない道に出ました。
大きな段差を一旦下りて、落ち葉に埋もれて崩れかけた細い道を通り、再び少し登るというところ。
ここをビッキーは勢いをつけて駆け抜け、登りきったところで立ち止まって待っています。
「ほら、こんな風に進めば大丈夫だから」
とでも言いたげです。

だけど・・・人間の私にはそんな身のこなしは出来ないのよーっ
今回はダブルストック(シナノ VIP-CARBON)を使っているから同じ「4つ足」ではあるけれど、ビッキーよりも遥かに時間をかけて、ゆっくり慎重にこの難所を通過しました。

そしてなんとかビッキーに追いついた時、彼女は登山道から少し斜面をよじ登ったところで振り返り、私をじっと見つめました。
どうやら、「今度は先に行って」と道を譲ってくれているみたい。
こうしてこれまでとは立場が逆転、今度は私が先に進むことに。自分のペースでトコトコ進み、時々立ち止まって振り返るとビッキーが駆けてくる・・・そんなことを数回繰り返しました。
そんな楽しい1人と1匹の山歩き、このままずっと続けばいいのに・・・。
しかし、私の望みがかなうことはありませんでした。

難所を越えてそう進まないうちに、ビッキーがぴたっと立ち止まって動かなくなったんです。
「ビッキー?来ないの・・・?」
そう声をかけながら振り返ると、少し離れた場所からじっと私を見つめるビッキーのまなざしがありました。

ここでお別れ・・・

ぎゅうっと、胸が切なくなりました。
もしかしたら、私が朝感じた「予感」は天気の急変だけじゃなく、さっきの難所で何かが起こる暗示だったのかもしれない。それを察してあの難所を越えるところまで、ビッキーは同行してくれたのかもしれないなぁ。

「あとは、もう大丈夫でしょう」
そんな風に背中を押された気がして、私は再び前に向き直りました。
ありがとうね、ビッキー。ここからは1人で、自分の道を歩いていくよ。
ここからはひとりで

それから私は、もしかしたらビッキーがまたついてきてくれるかもしれないと、振り返り振り返りしながら山を下りていきました。
すぐにこんな標識も現れて、もう道迷いの心配もなさそうです。
初狩駅方面へ向かいます

標高を下げるほどに天候も回復し、朝通った時のようにまぶしい陽射しの降り注ぐ明るい登山道が続きます。
明るい山道

ビッキーはやっぱり、もう私を追いかけてくることはありませんでした。
それでも私はずっと、ビッキーのことを考えながら歩いていました。
ビッキーは山の中で暮らしてはいても、完全に人間との関わりを絶って生きていくことはできません。
だけど、私がその身体に触れようと手を伸ばした時、はっと身を固くして1歩下がった彼女がいました。
その時の目には、明らかに怯えの色が浮かんでいたんです。
過去に何があったんだろう・・・。

彼女がどう思っているかなんて、彼女自身にしか分からないから、私があれこれ考えたって推測の域を出ることはないでしょう。
ただ、そう若くはない彼女には、これからも自分の思うように生きていって欲しい、そう願うばかりです。
私は鬱蒼と生い茂る林の中に向かって、声を上げました。
「ビッキー、ありがとう!」
この声が風に乗って、この山のどこかにいる彼女の耳に届いていたらいいな。

そしてふと視線を谷側へ向けると、小枝をびっしりとつけた斜面の木々に光が当たって、芸術作品のように輝く美しい光景が広がっていました。
まるで芸術作品!
わぁぁキレイだなぁ~。
ビッキーの住む山は、こんなにも素敵なところなんだね

それから私は明るい植林の道をジグザクを切って下りていきます。
林の道を下りていきます

途中で沢コースへの分岐があって、玉子石を見て帰ろうかなって思ったんだけど、「落石注意」みたいな張り紙があったので今回は自重することにしました。

こうして麓の町まで下りてくると、そこには何事もなかったかのようにのんびりとした風景がありました。
私は暖かな陽射しの中、ぽかぽかの心を抱えて2009年最後の山行を締めくくったのでした。
のどかな里の風景に戻りました

山頂での降雪やビッキーとの時間・・・まるで地上とは別の世界を旅してきたかのような気分にさせられた、今回の高川山登山。
なんとなく良くない予感もあったんだけど、こうして無事に下山できて何よりでした
「もしかしたら、山頂から先のコースへ進んでも大丈夫だったんじゃない?」
「もう少し山頂で待っていれば、天候は回復したかもしれないよ?」
1年前の私だったらきっとそう思っていたことも、今の私ならこんな風に思えるんだ。
「元気に下山できたんだもん、これで良かったんだよ。思い残したことがあるなら、また来ればいいじゃない!」

私はまたきっと、この高川山を訪れることになると思います。
今度行く時は、ザックにビッキー用の美味しいごはんも詰めて行くからね

2009年に出会った全ての山と、全ての人々に、「ありがとう」
2010年も、どうぞよろしくお願いします

【終わり】

(自分用メモ)
◆今回のルート
初狩駅(9:27)→男坂・女坂コースと沢コース分岐(9:53)→変わった形の松がある展望スポット(10:06)→男坂と女坂の分岐(10:08)→(男坂)→男坂と女坂の合流(10:32)→高川山山頂(10:43-11:44)→男坂と女坂の分岐(11:57)→(女坂)→沢コースとの合流(12:09)→男坂・女坂コースと沢コース分岐(12:35)→初狩駅(12:57)

◆周辺の天気予報
初狩駅(大月市下初狩)周辺のYahoo!天気

◆水場とトイレ
トイレは初狩駅で。
水場らしき場所は見なかった(沢コースにはある?)ので、駅で調達しておくといいかも。(駅前を直進した大通り沿いにはコンビニがあるみたい)
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