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2010.02弓立山~上谷の大クスひとり登山(3)

弓立山~上谷の大クスひとり登山、(1)(2)の続きです。

弓立山山頂直下のパラグライダー発着場を後にした私は、のどかな山里の風景を眺めながらひたすら車道を下っていきました。
のどかな山里の風景
本当は途中から山道に入った方が近道みたいなんだけど、ちょっと道が分かりづらかったので確実な道を選んだわけでして・・・

こうして弓立山入口のバス停前までたどり着くと、そこから少しでようやく「いこいの里 大附」へとたどり着きました~
いこいの里 大附

ここからはいよいよ次の目的地、「上谷(かみやつ)の大クス」を目指します
道を尋ねようといこいの里の施設内に入ってみたのですが、お昼前とあって厨房は大わらわ。
道を聞くためだけに呼び出すのも申し訳ないなぁ・・・と、私はそのまま施設の中を通り抜けて、庭へと出てみることにしました。

広い庭にはいくつものテーブルが置かれ、お客さんたちがのんびり過ごされています。
私は一番近くに座っていらっしゃった男性に声をかけました。
「すみません、この近くに有名なクスノキの大木があるはずなのですが、どこにあるかご存知でしょうか?」
「クスノキの大木?はて・・・。」
その人は記憶を辿るようにくるりと目を回すと、
「ちょっと分からないなぁ。そうだ、ここの職員さんなら地元だから分かるだろう。」
と、たまたま通りがかった職員の女性をつかまえて下さいました。
その職員さんは大クスのことをご存知で、ここを下ったところにある林道を1時間位歩けば、大クスの前に出ることを教えて下さったんです。

職員さんとその男性にお礼を言って立ち去ろうとすると、
「1時間ってのは結構な距離じゃないか。なに、ここでお茶でも飲んで、少し休んでから行ったらいい。」
そう言って、男性は私にお茶を出して下さったんです。
こうして少しの間、その男性の奥様と3人でお話ししながらお茶休憩を取らせて頂いた私。

「それでは、そろそろクスノキを見に行きますので・・・。ご馳走様でした!」
いよいよ大クス目指して歩き始めます

建物の横を通っている車道を少し下ると、左は越生梅林、右に大クスの木と書かれた分岐がありました。
大クスの木へ向かう林道

ここから右手に入って行く道は、今まさに舗装工事中のよう。
大型車両によってつけられた轍はひどくぬかるんでいたので、私は足を取られないように道の端っこをそろりそろりと歩いていきました
かなり荒れてます・・・

看板は確かにあったけれど、この道には観光客が通った形跡が全くないなぁ。本当にこの道をずっと歩いていれば着くんだろうか・・・
不安になるぐらいひたすら歩き続けた頃、荒れた道はアスファルトの舗装道路へと変わり、道幅も広くなりました。
そして、カーブの外側が駐車場になっているところまで出てくると、再び「大クスの木」と書かれた看板が現れたんです!

ちょうどその時、大クスの見学に来ていたらしいグループが駐車場のところへと戻ってこられたので、私は声をかけました。
「こんにちは!クスノキはこの裏手にあるんでしょうか?」
 「すぐそこ、1分もかからないわよ。ほら、そこの家の裏に頭が見えているじゃない。あの大きな木がクスノキよ。」

えぇっ!?

民家の裏手に茂る緑

民家の裏手は竹林になっているようで、黄身がかった柔らかな葉がこんもりと茂っているのが見えました。
その左に、竹とは種類の違う深緑に近い葉を持った木が、竹たちよりも頭ひとつ飛び出るようにして聳え立っているんです。

まさか・・・あれが、大クスなの?

民家の裏手に伸びる、少しくずれかけた丸太の階段に、私はわざとらしくゆっくりと足をかけました。
ついに会える。ついに・・・。
その足運びとは裏腹に、鼓動だけは急激にそのペースを上げていくのでした。

そしてついに、私は上谷の大クスの前に立ったのです。





上谷の大クス






「言葉」ってやつは・・・万能じゃないんだなって、今強く思います。
この時私が感じた、胸に突き刺さるような衝撃と感動を、どうやって言い表せばいいんだろう・・・。

温暖な気候を好むとされるクスノキが、この地域でこれだけの巨木に成長するだけでもすごいことなのに・・・。
この大クスは生命力に満ち溢れて、ヤマタノオロチのように太い幹を分岐させ、葉を生き生きと茂らせてそこに立っていたんです。

生き生きと葉を茂らせる大クス

「すごい・・・よく、こんなに・・・・・・。」
ようやく絞り出した声は、途中でかすれて消えていきました。
その言葉に続けたかった感情は、代わりに目からあふれ出してきました。

それから私は滲む視界を手の甲で何度も何度もぬぐいながら、大楠の周りをゆっくりと1周しました。
もう、何て言ったらいいのか・・・・

動画も撮りました。少しでもこの大クスの迫力が伝わるといいなぁ。
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この大クスへは、越生の町の方から車で上がってこられる方が多いようで、私がいる間にも数組の観光客が入れ替わり立ち替わりやってきました。大クスをぐるりと囲むように木道が作られていて、ここを訪れる人が少なくないことと、この木が本当に大切にされているんだということを感じました。

もう少しその姿を眺めていたくて、私は大クスの前に設置された木のベンチに腰掛けると、ザックから取り出したゆで卵を頬張りました。
こんな風に大木と向き合いながらご飯を食べるのって、屋久島の縄文杉を訪れた時と同じだなぁ。東京からこんなに近い場所にだって、こんなにも立派な大木が暮らしているんだ。
こうして私はしばらくの間、偉大なクスノキと共に過ごしたのでした。

こんなに大きいんです

私はこんなにもちっぽけな存在だけどさ、
「道が違ってるよ」って教えてくれたシダたちとか、
休む場所と素晴らしい展望を与えてくれた男鹿岩とか、
山頂まで導いてくれたキラキラの葉っぱたちとか、
親切にして下さった、パラグライダーの事務所の方、
いこいの里大附の職員の女性、お茶を下さったご夫婦、
色んな人たちに助けられて、ここまで来れたんだ。
「ひとり登山」は、決して「ひとりぼっち登山」なんかじゃないんだ。

全てのものに、感謝します。
そして、今目の前にいる大クスさん、あなたにも・・・。

生きててくれて、ありがとう。
私も生きてて、良かったぁ


こうして、今回の目的である「弓立山に登ること」と「上谷の大クスに会うこと」を無事達成した私。
後は「越生梅林」の道標に従ってひたすら舗装道を下るばかりでした。
舗装道を下っていきます

やがて町まで下りてくると、辺りは人や車で大混雑!まだ時期は早そうでしたが、開花が待ちきれなかったのか、越生梅林に大勢の観光客が詰め掛けていたのでした。
越生梅林

越生駅までは、こうした人々や車を避けながらの長い道のり。今まで歩いてきた道では感じなかった疲労感がどっと押し寄せてきました。
「越生梅林からは、バスで駅まで戻った方が良かったかな・・・。」
そんなことを思いながらも、時折見かける梅の花に心を緩ませながら、私は無事に越生駅へとたどり着いたのでした。
梅の花

大勢の観光客で賑わう町からほんのわずかのところに、豊かな緑と素晴らしい眺望を持った山がある。長い長い年月をたくましく生き続けてきた巨樹がいる。それは私だけが知っている秘密のように思えて、なんだか胸の奥がくすぐったくなるような気持ちになった今回の山行でした。

心の奥にぽぅっと灯った「単独行」の言葉から、今は敢えて意識を逸らしておこう。
私はこれからもっと山ときちんと向き合うために、もっともっと自分を成長させていきたいと思います
「勉強」とか「経験」とか「訓練」とか、そういうこともきっと苦にはならないはず。

だって、私は山が大好きなんだから!

【終わり】

(自分用メモ)
◆今回のルート
明覚駅(7:24)→大通りから左折(7:49)→八幡神社(7:54)→幼稚園の庭を通過(8:05)→石碑前通過(8:07)→道に間違えて引き返してきて再び石碑前(8:20)→男鹿岩(8:46-9:21)→弓立山山頂(9:31-9:35)→パラグライダー発着場(9:39-9:42)→弓立山入口バス停(10:19)→いこいの里 大附(10:29-10:40)→大クスの木へ向かう林道分岐(10:42)→上谷の大クス(10:58-11:29)→越生梅林の入口(12:15)→越生駅(13:07)

◆周辺の天気予報
入間郡越生町越生周辺のYahoo!天気

◆水場とトイレ
トイレは明覚駅、いこいの里 大附の前、上谷の大クスの少し下、越生駅にある。
水場はコース中にあったかどうか・・・。大通り沿いやいこいの里などで飲み物の調達は可能。
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2010.02弓立山~上谷の大クスひとり登山(2)

弓立山~上谷の大クスひとり登山、(1)の続きです。

登り始めに道を間違えるというトラブルもありながら、なんとか男鹿岩までたどり着いた私。
どーんと立つその大きな岩を前にしてふと左に顔を向けると、まぶしい朝日に目を射られて視界は一瞬真っ白になりました。
それからぼんやりと霞みながら、遥かに広がる風景が徐々に浮かび上がってきたんです。

うわぁっ、この景色!
私は男鹿岩に上方から回り込むようにしてよじ登ると、まるでビルの屋上のようなその上に立ちました。

「わぁぁぁぁ――・・・っ

信じられる?この景色。眼下に延々と続いていくこの台地の広さ!
男鹿岩からの景色

まるで自分が鳥になってしまったかのような浮遊感に身をゆだねて、私はしばらくこの素晴らしい世界の中を漂っていました。
男鹿岩に腰を下ろします

ふと足元の崖下を見ると、解け残った雪が白く浮かび上がっています。季節はまだ冬だね。
足元には残雪

男鹿岩の上は不思議と風がなく、とっても穏やかです。
他に登山者が来ているようなら、ここに長居をして邪魔はしたくないなぁと思っていたのですが、今この山にいるのは私1人なのではないかと思うほどに山全体がひっそりと静まり返っているのでした。

それじゃあ、ここでちょっとお茶にしよう。私はザックから調理道具を取り出しました。
エスビット ポケットストーブにそっと火を入れると、小さな鍋の下で音もなく炎がゆらゆらと上がり始めます。
正直、ガスストーブに比べたら、この固形燃料を使うコンロは火力も弱く、お湯を沸かすのにも時間がかかります。
だけど、静かに揺れる炎を眺めながらお湯が沸くのを待っていると、心がすーっと落ち着いてくるんです。
もちろん登山の行程や人数などの状況によっては、「便利さ」や「速さ」を重視することもあるけれど、ひとり登山の時にはこういう「贅沢な時間」も大切にしたいなぁって思います

やがて、沸いたお湯を使って私はフリーズドライのおしるこを作りました。
うーん、温まる~

静かな静かな山の中、崖に突き出した岩の上で遥かに広がる景色を眺めている・・・
標高500mにも満たないこの場所で、私は「高山の頂で一服している登山家」みたいな気分を楽しむのでした。
のんびりお茶タイム

こうしてカップを空けた私は、荷物を片付けると男鹿岩を降りました。
事前に調べた情報によれば、ここから山頂までは何分もかからないはず。私は何度も景色を振り返りながら、坂を登っていきました。
男鹿岩を後にして・・・

そして再び植林の道へ入っていくと、朝の斜光が木々の合間から一杯に差してきて、地面にストライプ模様を描き出していました。
それに、両脇を固める下草たちが、葉っぱの1枚1枚に光を反射させて、キラキラとまるで宝石のように輝いていたんです
山頂への花道

先ほど道を間違えた時と違って、今度は訪れる登山者を歓迎してくれているように思えます。
私はまぶしくライトアップされた山頂への花道を進みながら、誰ともなしにつぶやくのでした。

「私にこの道を歩かせてくれて、ありがとう。」

こうして坂を登り切ると、一部が切り開かれて見晴らしの良い場所に出ました~!
太陽の向きの関係か、さっきよりもくっきりと景色が見渡せます。
再び景色が開けました!

さて・・・、ここからどちらに進むのかな?
いくつか踏み跡があるように見えたので、私はキョロキョロと辺りを見回しました。

・・・と、

「弓立山 四二六米」

・・・えええ!!ここがそうなのっ?

突然目に飛び込んできた山頂標柱に面食らいながらも、ひとまず記念撮影を(笑)
弓立山山頂~・・・
登って登って、「やったー!登頂だー!」みたいな演出はありませんでしたが、とにかく弓立山の山頂に到着ですっ

この山頂の近くにはパラグライダーの発着場があって、少し小高くなったところに登ると、すぐそこに駐車場と野球のスタジアムみたいな建物が見えました。
パラグライダー発着場
ちょうど車から大きな荷物を降ろしている男性がいたので、私は早足で駐車場まで下りていき、その人に道を尋ねました。

「あぁ、大附の集落なら、この車道に沿って下っていって下さい。そうしたら丁字路に出ますから、そこを左折するんです。その後また山道に入れるようになっていますので。」
「この道を行って、左折ですね。ありがとうございます!」
お礼を言って立ち去ろうとした私に、その男性は続けました。
「そうだ、良ければこの上に上がってみたらどうですか?見晴らしいいですよ。」
「えっ、いいんですか?ありがとうございます!」
その言葉に甘えて早速その建物に裏から回り込むと、
「うわぁぁぁ――!!」
発着場からの景色
競輪のバンクのようになだらかに傾斜した斜面の先には、遮るものもなく、遥か遠くの街まで見通すことのできる絶景が広がっていたんです!

すごい!パラグライダーってこんなところから空に飛び出していくんだぁ。
私は自分も空を飛んでいるような気分になりながら、しばらくこの爽快な眺めを楽しみました。

こうして事務所の方にお礼を言ってパラグライダー発着場を後にした私は、先ほど教わった通りに車道を下り始めます。しかし、歩きやすい舗装道のはずなのに、私の足は一向に前へと進まないのでした。

参ったなぁ・・・。どうしよう。これは困った・・・

あまりに景色がキレイすぎて、一歩も動けないよ・・・


歩き始めてもこの絶景・・・


私はカメラのシャッターを切ることすら忘れて、まるで金縛りにあったかのようにじっと動かずに、ただ目の前に広がる光景を見つめていました。

お地蔵さんになって、毎日ずっとこの景色を眺めていられたらいいのに。

私はそんなことを考えながら、石のように固まった足を地面からようやく引き剥がし、素晴らしい青空の中を一歩ずつゆっくりと進み始めたのでした。

気持ちの良い舗装道

【次回へ続く】
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2010.02弓立山~上谷の大クスひとり登山(1)

弓立山(427m/埼玉県比企郡ときがわ町・入間郡越生町)

今回のルートマップはこちら(ルートラボ)

天候の思わしくない日が続いた2月のある週末、ようやく天気予報に晴れのマークが現れました。
友達の都合がつかなかったので、今回は単独行。さて、どの山へ行こうか。

行き慣れた山域で、駅から歩ける低山がいいな。そして何より、自分自身が行きたい!と思える山を。
山と高原地図 22 奥武蔵・秩父を広げて隅々まで見渡すと、ある場所が私の目にふと留まりました。
「ここは・・・」
さらなる情報を集めているうちに、頭の中でどんどん計画が組みあがっていきます。

よし、決まった。駅から歩いて、この山に登ろう。
そして・・・このひとに会ってこよう。

こうして登山当日、寒さに震えながら早朝の電車を乗り継ぎ、八高線の明覚駅へと降り立った私。トイレを済ませて装備を整えると、駅前の信号を左折して大通り沿いを歩き始めました。
明覚駅から歩き出します

ここからしばらくは舗装道路歩き。「古民家カフェ」なんていうちょっとオシャレな看板なんかに目をひかれながら、ひたすら道なりに進んでいきます。
時間さえ合えばバスが使えるかもしれないのですが、休日だと始発の時間がかなり遅いみたいですね~。

そしてときがわ町役場第二庁舎を越え、中学校を過ぎると、左手にはのどかな畑の風景が広がりました。
そこから横道が伸びているのですが、その角にはこんな看板が立っていたんです
温泉スタンドの看板
温泉マークをかたどったそれには、「温泉スタンド・男鹿岩」の文字が書かれていて、その足元には赤い帽子と上着を羽織ったお地蔵様が立っているの。
弓立山の山頂直前に、男鹿岩という大きな岩があることは事前に調べていたので、私はここから左の道へ入りました。

そして八幡神社にぶつかって、左側の道を進んで行くと、再び「男鹿岩」と書かれた指導標に出会いました。
だけどこれ、ちょっとおかしい・・・。だって、指し示す先が明らかに幼稚園の中なんだもん!

そう、実はここ、幼稚園の中を通って登山口へ入るという変わったルートだったんです(笑)
「お・・・お邪魔します。」
ひっそりとした休日の幼稚園に一声かけて、私はほんのりとした後ろめたさとともに幼稚園の庭を通り抜けるのでした
幼稚園の中を通って・・・

果たしてこの道に誤りはなかったようで、幼稚園の庭の奥から登山道は始まっていました。私はホッと一息ついて、いよいよ弓立山の山頂を目指して歩き始めます。
植林の中の道を入っていくと、すぐに石像や石碑がずらりと立ち並ぶ場所に出てきました~。
石碑の前の道
なんだろう、ここ。お墓じゃないよねぇ?
石碑たちに興味を引かれながら、私はこのまま道なりに真っ直ぐ進んで行きました。

・・・えぇと、ここで重大なお知らせがあります。
万が一このブログをここまで読んだところで弓立山へ向かってしまう方がいらっしゃったらいけないと思うので、最初に結論からお話しさせて頂きますが、

この道を直進するのは間違いですっ

実はこの石碑たちの手前に、右折する道があるんです。そっちが正解。
これは登山口から歩いてきて石碑が見えてきたところで、右側を向いて撮った写真です↓↓
正解の道はコチラ!
ここまで歩いてくると石碑に注意が向いてしまうし、直進方向の道がかなり太くてしっかりしているので正規のルートを見落としやすいです。どうぞご注意下さいっ

では、間違えて直進してしまうとどうなるのかって?
それはこの続きをご覧下さい(苦笑)

石碑の前を通って直進していった私は、すぐにわずかな違和感を覚えました。
「この道・・・あんまり人が入っていないのかなぁ?」
確かに、道自体ははっきりとした意思を持って真っ直ぐに伸びているように見えました。しかし、足元には針葉樹の落ち葉が厚く積もって、急にふかふかと柔らかな道へと変わったんです。
直進した道は・・・
少し進むと道は徐々に細くなり、両脇からはまるで道行く人の進路をはばむように、低木の小枝が張り出してくるようになりました。
弓立山は、そこまで人の出入りが少ない山ではないはずだ。人が多く入れば道もそれなりに踏み固められるだろうし、登山道に伸びる小枝もある程度淘汰されていくものじゃないだろうか。
そんな疑問を感じてふと足を止めた私は、決定的なものを目の当たりにしたのでした。

生き生きとしたシダたちの姿

シダが・・・遊んでる・・・。
私の前方、道いっぱいに張り出して、生き生きと葉を広げるシダたち。
「ここは人間の、特にあなたのような一般登山者の通るべき道ではない」
その姿からは、そんなメッセージさえ聞こえてくるような気がしたんです。

・・・決めた。引き返す。
私はくるりと踵を返して、来た道を忠実にたどり始めました。「道が怪しくなったら分かるところまで引き返せ」という登山の鉄則通り、道に違和感を覚えたあの石碑のところまで戻ることにしたんです。
 おかしいなぁ、道を間違えたのかなぁ。でも他に道らしい道もなかった気がするし・・・。そんなことを考えながら、いつの間にか早足になっていた自分に気付き、
「大丈夫、ゆっくり行こう。まだ時間はたっぷりあるんだから!」
そう声に出して気持ちを落ち着けました。

こうして先ほどの石碑のところまで戻ってきた私は、ここでようやく石碑の裏手の方へ伸びていく登山道の存在に気づいたのでした
ここから緩やかに登っていく坂道は、先ほどより遥かにしっかりと踏み固められ、整備されているようでした。
そこからはわずかに勾配が増したものの、ほとんど息を乱すこともないまま快適な登りが続きます。やがて丸太の階段が現れると、「良かった、この道で合ってるみたいだね・・・。」と少しホッとする私なのでした
階段があるとホッとします・・・

気持ちに余裕の戻ってきた私は、辺りの景色や空気を楽しみながら歩いていきました。
見て、こーんなに大きな綿毛がいるっ巨大なタンポポみたいな植物でもいるのかなぁ!?
大きな綿毛

木漏れ日の中、背の高い植林の間につけられた細い登山道はとっても快適なの。
気持ちの良い山道
あぁ、こういう道を歩くのって、本当に楽しいなぁ

やがて、勾配が増して足元に岩や木の根が目立つようになりました。
目指す先が、まぶしく輝いています。
この坂を登っていくと・・・
あの光の方へ、光の世界へ・・・私は登りのきつさも忘れて、一心不乱に足を進めていきました。

そして、林を抜けると・・・辺りが急にぱぁっと開けました!

どーん!!
男鹿岩

道の左側が「崖」と呼べるほどに急激に切れ落ちていて、まさにその「崖っぷち」にビルのように角ばった大きな岩がどんと立っています。
わぁっ!これが男鹿岩なんだっ

【次回へ続く】
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yamajoshi (ヤマジョシ)
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