2010年のおわりに
私にとって、この一年は本当に内容の濃いものでした。
「この山に登ってみたい、この山の持つ世界をこの目で見てみたい」
そんな思いから、沢山の山にお邪魔させて頂きました。
西日本への遠征や、夏の高山登山。
色んな出会いや感動があったっけ。


今年から山小屋やテントでの泊まり登山をするようになり、日帰りでは見ることのなかった山の世界を目の当たりにすることにもなりました。


また、今年は本の出版など、「地上での登山」をすることもあったりして(笑)
こうして今年も楽しく、無事に登山生活を送ることができたのも、助け合ったり、分かち合ったりすることのできる良き登山仲間の皆さんとめぐり会えたからだと思っています。
それは、直接お会いしていなくても、今このブログを読んで下さっている方も含めてのことです。
本当にありがとうございました。
しかし今年は、出会いだけでなく・・・高川山に暮らす犬のビッキーという、大切な山の仲間を喪うことにもなりました。
ちょうど1年前に彼女と高川山を歩いたことを思い出します。とても悲しい、今でも悲しいです。
だけど・・・どんなに悲しくても、そこにやっぱり山はあるから。
いつでもそこで、山は待っていてくれるから。
だから、私はまもなくやってくる2011年も、多くの出会いを求めて山へ向かいたいと思います。

これからも安全第一、無理せずマイペースに歩んでいきたいと思っています。
皆様、今年も大変お世話になりました。そして、来年もどうぞよろしくお願いいたします。
2011年も、よい山を☆
2010.08赤岳日帰り登山(3)
赤岳登頂を果たし、頂上小屋の前で山ごはんを楽しんだ私たち。
今回は日帰り登山なので、日没前には下山を果たさねばなりません。
出発前にトイレを済ませることにしましたが、トイレは小屋の裏手、少し下ったところにあるみたい。
交代で行くことにして、先に友達がトイレへ向かって下っていきました。
こうして彼女の姿が見えなくなった頃、
「うおおおお!!」
あちこちから上がる歓声。なんと、突然前方のガスが流れて、阿弥陀岳へと続く美しい稜線がくっきりと姿を現したのです!

わぁぁぁぁー!すごいっ

あの稜線、歩いたらどんなに楽しいだろうなぁ。いつか歩いてみたいなぁ

しかし、ガスの晴れ間がのぞいたのはほんの数分でした。あっという間に景色は再び白い世界に閉ざされてしまったんです。
その直後、背後から友達の声。
「お待たせー。」
「あ・・・。」
この時、私は思いました。
私も彼女も雨女を自称しているけれど、もしかして今日のこの雲を呼んでいるのは彼女なのでは・・・と(笑)
という冗談は置いといて(苦笑)
いよいよ私たちは美濃戸口へ向けて下山を始めました。
今回は赤岳山頂から阿弥陀岳へ伸びる稜線を少し進み、分岐からは文三郎尾根に折れて行者小屋まで下る計画です。
しかし、こちらのルートも非常―――に険しかった!

これは振り返っての撮影なんだけど・・・ごつごつした岩だらけの急坂で、鎖やハシゴがいくつもかかっています。

見るからに登りもきつそうだけど、下りにも危険を感じます。これは慎重にいかないと・・・
それでも、こんな岩場にさえも小さな植物が美しい花を咲かせているんです。

生きてるよ~。みんな精一杯生きてる

私も生きて、元気に家まで帰らなきゃ!
だからこういう鎖を見かけても、ぶら下がってふざけたりしない!(笑)

もう時刻は午後ですが、小屋泊まりと思われる登山客がまだまだ登ってきます。
お互いうまくやり過ごしながら登り下りする必要がありますが、そのお陰でペースが落ちて慎重に下ることができたので、すれ違いの多いことがむしろありがたいと感じました。
時間に限りがあるとはいえ、焦っちゃいけない。こんなにも険しい道なんだからね・・・

やがて岩場が落ち着き、阿弥陀岳へ向かう道と、文三郎尾根の分岐点へやってきました~。
ガスの合間に見え隠れする、あの美しい稜線。

状況さえ許せば、このまま直進したかったなぁ。あの道を歩いたら、どんなに楽しいことだろう。
私は少しの間この場所に腰を下ろして、稜線に伸びる登山道を目でなぞっていました。
・・・さぁ、今日は予定通り、文三郎尾根から下山しよう!
あの道はずっとここにあるんだから、また来ればいいんだよね

こうして歩き始めた文三郎尾根。険しい岩場はなくなりましたが、今度はザレ場・ガレ場の歩き辛い道になりました

むしろこっちの方が滑りやすくてキツイかも・・・。私たちは乾いた砂と小石に何度も足を取られては、ヒーヒー言いながら下っていくのでした

先ほどまで目線の高さにあったはずの中岳、阿弥陀岳の姿は、もうすっかり手の届かない場所になってしまいました。

まるで魔法が解けるかのように、私の歩いてきた稜線はどんどんどんどんせり上がり、私を取り囲む高い壁へと変わっていきます。
さっきまであの高みへいたことが嘘みたいだね・・・。
こうしてなんとか無事、傾斜が落ち着くところまで下ってきました。森の中へ入って少しホッとしますが、道はまだ滑りやすいので要注意。

さすがに疲れもたまってきたし、ハードな下りで精神力も消耗していた私たち。
行者小屋までがとてつもなく長く感じて、「まだかなー・・・まだかなー・・・」と言いながら進んでいきました(苦笑)
ようやく向こうから賑やかな人々の話し声が聞こえてくると、広場の向こうに行者小屋の姿が!
「着いたー!」
ここからまだまだ先があることは、お互い敢えて口にはしませんでした(苦笑)
小屋の前はテント場になっていて、色とりどりのテントが立ち並んでいました。
その脇を通り抜けようとした時、目の前にヒラヒラ・・・と鮮やかな色彩の蝶が飛んできたんです!
わぁ!!すっごいキレイー!!こんな蝶見たことない!!


目の前の花にふわっと舞い降りた蝶は、私がどんなにカメラを近づけても逃げようとはしませんでした。
まるで印象派の絵画のようなその美しい模様にじーっと見入っていると、これまでの疲れさえ吹っ飛んでしまいます。
携帯の電波が入ったのでこの蝶の写真をTwitterにアップしたら、詳しい方々から「それはクジャクチョウだよ」とすぐに教えて頂きました!
孔雀蝶・・・名前にぴったりの美しい蝶ですね☆教えて下さった皆さん、ありがとうございました!
(それにしてもTwitterの情報力とスピードってすごい・・・)
気が済むまで蝶に見とれた後、私たちは行きと同じようにベンチに腰を下ろして休憩をとりました。
疲れたけど、ここまで来たら後は比較的なだらかな道だけだよね。もう少し頑張ろう!
こうして、行きにも通った美しい森の中へ進んでいった私たち。

延々歩き続けて、もう足の裏もだいぶ痛くなっていたんだけど、やっぱり森は素晴らしく輝いていました。
足がだんだん上がらなくなってきて、木の根っこに度々つまずくようになってもなお、山歩きの楽しさは消えませんでした。
そして・・・美濃戸山荘に到着~!

「わ――――!!着いた――!!」
(まだ先があります、というのは禁句で・苦笑)
私たちはここで帰りの高速バスの予約と、美濃戸口からバス停までのタクシーの迎車依頼を済ませました。
ここからは簡易舗装の道、あと1時間もかからないね。
タクシーの迎えの時間に合わせて、再び歩き始めます。
すると途中で、こんなに不思議な光景に出会いました。

太陽の位置が低くなって、その上にある雲を下から照らしているのかな?
雲の上の空に、影が浮かんでいました。
その幻想的な光景を見上げながら、無事に美濃戸口へとたどり着くことのできた私たちなのでした。
八ヶ岳の美しさや険しさ、雄大さを目一杯感じることのできた今回の山行。
帰りの高速バスの中で、私はこんなことを心に誓うのでした。
今度は泊まりでゆっくり来よう。あの美しい稜線を、ずっとずっと歩いてみよう。
赤岳登山の夢がかなった私に、新しい夢が生まれました

・・・ちなみに、美濃戸口から高速バスのバス停へ向かうタクシーに乗り込むとき、
中央道 原(ちゅうおうどう はら)バス停のことを中央 道原(ちゅうおう みちはら)バス停
と間違えて、タクシーの運転手さんを困らせてしまったことはここだけの話です(苦笑)
【終わり】
※自分用メモは後日掲載予定です。
2010.08赤岳日帰り登山(2)
行者小屋から地蔵の頭まで、ハシゴの連続する険しい道をひたすら登っていく私たち。
一気に標高を稼いでいるせいか、辺りの景色はどんどん低くなっていきます。
眼下に広がるのは、こんなにも濃密な緑の世界。
これが日本の一風景だなんて・・・信じられる?

登っても登っても、進む先には私たちを拒むように岩壁が立ちはだかっています。
そしてついには、こんな鎖場まで現れましたー!!

とはいえ、実際に登ってみれば見た目ほど難しいものではありません。
もちろん危険がないと言うわけではありませんが、落ち着いて、慎重に登れば大丈夫。
先行者の鎖場通過を待ちながら、ふと振り返るとこんな風景に出会いました。
このままふわっと宙を舞って、夏の雲に吸い込まれていきそうだよ・・・。

こうして、なんとか岩の急坂を登りきった私たち。
ようやく・・・ようやく稜線へと上がることができましたー!!

前方に見える一番大きなとんがりのてっぺん、あれが赤岳の山頂だね!

でも・・・左側からものすごい勢いで上がってきている「白いモクモク」は何だろう・・・?(苦笑)
実は私も友達も、かなりの雨女なんです。
登り始めはあんなに青空だったのに・・・ここに来てパワー発揮とは・・・

一抹の不安を感じながらも稜線をたどり始めた私たち。
目指す頂はガスに巻かれて見えなくなったり、時折さぁっと姿を現したりしています。
願わくば、私たちがその場所に立つときには一瞬でもいいからガスが晴れて欲しいっ

そんなことを祈りながら進みます。
ほどなくして、赤岳展望荘に着きました~。

ここまでの急登でだいぶ体力を使っていたので、小屋前のベンチに腰を下ろして小休憩を取りました。
そして再び歩き始めた時、私は信じられない出会いを果たしたのです!
「そこ、コマクサ咲いてるよ」
近くに座っていらっしゃったおじさまの声で、ふと斜面に目を落とすと・・・
あーっ、ホントだー!!

ガスに覆われて霞む視界の中に、くっきりと浮かび上がる鮮やかなピンク色。
その独特の形は、まぎれもなくその花のものでした。
時期的にまさかここで「高山植物の女王」に出会えるとは思っていなかったので、これは思わぬサプライズ!
本当にキレイだなぁ~


とはいえ、さすがに咲いていたのはわずかに1株でした。
ですが、そのたった1株が、もしかしたら私たちを待っていてくれたのかもしれない

コマクサの可憐な姿に元気をもらった私は、いよいよ山頂を目指して最後の登りにかかりました。
急な斜面、険しい岩場・・・やはり八ヶ岳の主峰はそうやすやすと登頂を許してはくれなさそうです。
晴れていればものすごい絶景の中を登れるはずでしたが、この日はガスでほとんど景色を望めませんでした。
視界の利かない中、油断は許されません。

だけど、楽しかったぁ。本当に楽しかった

ハードな登りも楽しかったし、憧れ続けた八ヶ岳の稜線を自分の足で歩けることが嬉しかったし、
それに・・・ほら、足元のこんなに小さな小さな存在にも出会うことができたから。

こんなに険しい山のてっぺん、荒々しい岩場の中で、花を咲かせ、実をつけて・・・
命はこんなにも強くて、尊くて、美しいものなんだなぁ。
「生きる」ってこと、「生きてる」ってこと。それは、どんなに素晴らしいことなんだろう。
一歩一歩に、心が大きく動かされました。
そして、赤岳頂上小屋に到着!

「頂上小屋」ということは・・・ここが赤岳の山頂なんだね!
と思ったのですが・・・もうひと頑張り必要なようです(苦笑)

それでも、小屋から山頂まではごくわずかの距離でした。
切り立った岩場の道を慎重に進んで、ついに、ついにたどり着きましたー!
やったぁ!赤岳、山頂!

残念ながら、空も眼下の景色も真っ白になってしまいましたが、憧れ続けたこの山にこうして立つことができ、感慨もひとしお。
この登頂は本当に嬉しかったです

幸い、ガスで景色は望めないものの、雨が降る気配はありませんでした。
私たちは一旦赤岳頂上小屋まで戻り、小屋前の広場(と言っても岩場ですが・・・)で昼食をとることにしました。
今日は私がご飯係。メニューはベーコン入りの野菜スープと尾西の五目ごはんにしました。
尾西のごはんはお湯を入れて15分待つだけという便利なご飯。スープもキャベツ以外の野菜は自宅で下茹でしてきたので、マギーブイヨン1個に具を入れてちょっと煮る程度ですぐに完成です


岩場に腰を下ろして、見えそうで見えない景色を心の目で堪能しながら(

「良かったねぇ、うちらちゃんとここまでこれたよ!」
「天気はイマイチだったけど、本当に良かったよね!」
と、なんだか登山を終えた人のようにしみじみとこれまでの道のりを振り返ってしまいましたが・・・
公共交通機関利用の日帰り赤岳登山、ある意味ここからが正念場ですから!(苦笑)
【次回へ続く】