2011.10 大山登山

前回は夏山(秋山?)登山の締めくくりとして、テント3泊の北アルプス縦走登山をしてきました。
3,000m近い稜線を歩いた日々はとても素晴らしい出会いに満ちていて、心に強く残る山行になりました


しかし、私にとっての「登山」は、高山だけではありません!
これからどんどん涼しくなってくるので、徐々に標高を下げて近郊の山を楽しみたいっ

というわけで、私は丹沢の大山へ向かったのでした。
実は、大山には春先(2月)に一度お邪魔したことがあったんです。
その時の同行者さんは花粉症持ちだったのですが、登山口に着く前から黄色い煙(=花粉)が山腹からもくもくと立ち昇っているのが見える状態でして・・・

結局、登山を諦めて帰ってきたのでした

今の時期なら花粉の心配もなさそうだし、楽しく登ることができそうですね!

こうして登山口へやってきた私たち。
駐車場はかなり混雑していたのですが、今回はツーリングを兼ねてバイクでアクセスしていたので、スムーズに駐輪させてもらうことができました!
私たちは装備を整えると、舗装道路を歩き始めました。
何ヶ所か短い階段を上りながら、お土産屋さんの立ち並ぶ通りを抜けていきます。

ケーブルカー駅への案内を横目に見ながら石段を上っていくと、「きつ~い男坂」と「らくらく女坂」の分岐にやってきましたー。
私たちは男坂を登ります!

男坂はさすがに「きつ~い」と道標に書かれていた通り、かなりの傾斜がありました

しかも、ほとんどが階段なんです。ひー、これはきつーい!



こういう道では自分に合った一定のペースで淡々と登っていきたいところなのですが、私はしばしば足を止めざるを得ませんでした。
なぜなら・・・足下にカワイイ花がちらほら咲いていたからです

特に気になったのがこちらの花。すごく小さくて、花びらの先がくるんと丸まってて、とっても清楚でかわいらしい雰囲気なんです


後日調べたのですが、この花はキッコウハグマという名前のようですねー。

しかし、あまりに小さな花だったので、デジカメ(OLYMPUS Tough TG-610)のスーパーマクロモードでも焦点がなかなか合わせられませんでした

しかも、純白の花びらの中にピンク色の雄しべ(雌しべ?)があってすごくキレイなのですが、写真に撮ると白とびしてしまってなかなかうまく写せません

というわけで、私は何度も何度も立ち止まっては、この小さな白い花たちにカメラを向け続けていたのでした(苦笑)
男坂の急な階段は、まだまだ続いていきました。
一旦上り切って平らな道に出ると、その先にはまた急な階段が現れ・・・と、次々畳み掛けてきます

なかなかきつい道のりですが、時折木々の合間に見える青空と濃い緑の森が、私の背中を押してくれました。
それに、緑豊かな森の道は歩いていて気持ちがいいですねー!



こうして上っていくと、ベンチや東屋のある広場のような場所に出てきましたー。
そして、その先で女坂と合流します。
そこから数分で、阿夫利神社下社へとたどり着きましたー!


ここはケーブルカーの駅があるので、観光客の方も多くいらっしゃいました。
山の中腹とは思えないような、キレイな石畳の道が続いています!
人も多くて街中のような場所ですが、すぐ脇の柵から崖の方を見下ろすと・・・
なんと、立派な角を生やした鹿がお散歩してましたよー


うーん、あの角が刺さったらちょっと痛いなぁ・・・。
空は広く、すっきりと晴れ渡っていました。
私たちは神社にお参りをしてから先へ進みます!


「頂上登山口」の看板に従って進み、石段を上っていくと、ぐっと山道らしい雰囲気になっていきました。
木漏れ日がいっぱいに射して、すごくいい雰囲気です



それから、こんなに立派な大木も現れましたよー!

これは「夫婦杉」だそうです。

登山道には所々に石柱が立てられていて、それぞれに「○丁目」という番号が振られています。
どれだけ登って来たのかの目安になってありがたいんだけど、果たして山頂が何丁目なのかは謎です(苦笑)
他にも「牡丹岩」や「天狗の鼻突き岩」などの変わった岩がありましたよー。
特に後者は、天狗が鼻を刺したみたいな穴が本当に開いていて面白かったです!

そして、「富士見台 二十丁目」の石柱のところまで登ってきましたー!

富士見ということは、つまり・・・
じゃーん!!


雲一つない空に、黒々と浮かび上がるあのシルエット!
どこにいても、富士山が見えると元気が湧いてきますねー!

さぁ、ここまで来れば山頂まではもう1kmもありません。
人も多いですが、私は最後のスパートでどんどん登っていきました。

そして鳥居をくぐり、この建物を通り過ぎると・・・

その先に、大山山頂がありましたー!!

とにかくすごい人出で、山頂標識の撮影も順番待ちになりました。
ちょっと微妙な写真ですが・・・背後には素晴らしい景色が広がっています!



陽射しは暖かいのですが、さすがに標高1,000mを超える山、吹き寄せる風はとても冷たく感じました。
空いているベンチは日陰だったので、防寒着を羽織ってから座っても、すぐに身体が冷えてきてしまいました

それでもすぐに近くの日向の席が空いたので、移動させてもらうことができました。ホッ

それでは、早速山ご飯を頂きます!

今回は大山登山ということで、登山前に豆腐屋さんへ立ち寄って、大山豆腐を買ってきていたんです。
写真だとちょっと見づらいですが、今回は湯豆腐もどきのお鍋を作りましたー!


熱々の大山豆腐を食べるのに、冷たい風が吹き抜ける山頂は最適な場所になりました。
ううーん、美味しい!それにあったまるー!


私たちはしばらくの間、温かい山ご飯を楽しみました。
しかし、その間にも次々と登山者さんが登ってきています。
日向のベンチにいつまでも居座っているのは申し訳ないので、私たちは食事を終えると手早く片付けをして席を立ちました。
そして少し場所を移動して、より見晴らしの良いところへやってきました。
予想以上に景色は広く、澄んだ空気が遠くの景色まではっきりと見せてくれていました。
いやー、これは素晴らしいっ!!


5分ほど景色を眺めて過ごした私たちは、今度は見晴台経由で下山をすることにしました

まずはこんな階段を下っていきます。

ここからはひたすら下っていきますが、階段などできちんと整備されているので、比較的歩きやすかったです。
前後を歩く人も多かったので、立ち止まったり寄り道したりせずに、流れに乗ってどんどん下りました。
そして、ベンチやテーブルがいくつも設置された広場に出てきましたー!
ここが見晴台で、ススキの頭越しに景色を見渡すことができました。
とっても雰囲気が良いですねー


ベンチは休憩している登山者さんたちで満席だったので、私たちは休むことなく下ることにします

ここからは少し人の数も減ってきたので、快適に歩くことができました。
こういう山道の雰囲気も好きなんですよねー。でも、春は花粉がすごそう・・・(苦笑)

こうしてどんどん下っていくと、一部登山道が崩れたらしきところに出てきましたー。
きちんと臨時?の橋が作られていたので、問題なく通過することができました!

それから滝などを見物しつつ、さらに下っていきます。
やがて、男坂と女坂の分岐が現れましたー。今度は女坂を使うことにします!

「女坂」というだけあって、とてもなだらかな道を予想していたのですが、かなり急な石段が続いていたりして結構下るのは大変でした(苦笑)
何とか下り階段も一段落して赤い橋を渡ると、大山寺までやってきましたー。
歴史を感じる立派な建物ですね。

ここまで来れば、登山口まではあと少し。
私たちはまたまた急な石段をひたすら下っていきます。
そして、男坂と合流するところまであと少しというところで、道端に並んでいるこんな植物に目が留まりましたー。

なんだか小さな蜂の巣のような、不思議な姿のこの子たち。
これはどうやら、ミツマタの蕾のようです!
この蕾から、一体どんな花が咲くんだろう?一度見てみたいなぁー!


こうして無事に男坂との合流地点まで下りてきた私たちは、お土産屋さんで湯葉を買ったり、路上販売の柿を買ったりして駐車場まで戻ったのでしたー

今回の大山登山は、「ゆる登山」と言うには少しハードな階段が続きましたが(笑)、余裕を持って楽しむことができました!
大山は観光地に近いイメージを持っていましたが、緑が濃くて登りごたえがあり、景色も素晴らしい素敵な山だということが分かりました

何より、山麓で作り立ての豆腐を買って山頂まで持って行き、お鍋を食べるなんてなんという贅沢でしょう!
これからどんどん寒くなってきますが、私の山登りに「冬眠」の文字はありません(笑)
さぁ、次回はどこの山へお邪魔しようかなー?
【終わり】
2011.10北アルプス燕岳~大天井岳~常念岳~蝶ヶ岳~涸沢テント泊縦走登山(4)【4日目:パノラマコース~下山編】
中房温泉から燕岳~大天井岳、そこから常念岳~蝶ヶ岳と歩き、3日目に横尾を経て涸沢へと入った私たち。
最終日の今日は4時過ぎに起床。これまでの厳しい環境に比べたら寒さも風もずっと穏やかで、地面の凹凸は多少気になったもののぐっすりと眠ることができました!

そして今朝も、尾西の白がゆにスープを足した朝食を頂きます

ゆっくりと身支度を整え、テントを片付けると、時間はもう6時半過ぎ。
外はすっかり明るくなっていました


昨日までに比べると、かなり雲が増えてきました。
でも、出発前~山行中にずっと天気予報をチェックしていたので、これは想定内。
今日中に下山すれば、雨に降られることもなさそうです!

ザックを背負った私は、もう一度ぐるりと涸沢の景色を見渡しました。
ずっと憧れていたこの場所に自分の足で訪れることができて、そしてこの場所で一晩を過ごすことができて、本当に幸せでした!

ありがとう。そして、また会う日まで。
涸沢ヒュッテでトイレを済ませてから、私たちは上高地へ向けて出発しました。
ちなみに、涸沢ヒュッテのトイレは個室の数がすごく多くて使いやすかったです。
しかも、便座が温かかったのには感動しました!

(ただし、中には便座が冷たいものもあったので、油断して座ると衝撃を受けます・苦笑)
ヒュッテを後にして黄葉の道を歩きはじめると、すぐに「パノラマコース」と書かれた岩の分岐にぶつかります。

ここからは昨日登ってきた横尾経由の道でも上高地へ下りることができますが、今回はこのパノラマコースを経由して徳沢へ向かうことにしていました。
「パノラマ」なんて言われたら、行かずにはいられないわけで・・・(笑)
こうして大岩の転がる道を歩き始めた私たち。
のんびり出発だったこともあってか、意外と人は多く、前後には多数の登山者さんたちが歩いていました。
そのため、なかなか立ち止まってゆっくりと景色を眺めることはできませんでした

歩き始めて数分、ふと振り返った先には、涸沢の素晴らしい景色がありました!


「うわぁ・・・キレイ!


後ろの登山者さんが追いついてくるまでの間、私は立ち止まってその景色を眺めました。
残り火のような秋の色は、もう間もなく真っ白な雪に覆われてしまうのでしょう。
その一瞬の季節の変わり目に立ち会えたことを、本当に嬉しく思いました。
ここに来て良かったなぁ!

それから私たちは、さらに先へと進んでいきます。
すると、道は徐々に険しさを増していきました。
左手の景色は素晴らしいのですが、右側は荒々しい岩壁が聳えています。
このコース、気が抜けません。

それからこんなに険しい岩場も現れましたー!
渋滞しているのでしばらく待ちましたが、その間に上部から「カラ、カラ・・・」と小さな落石の音が響いていたので、かなり緊張を強いられました。

そして、この場所で最も身の危険を感じる出来事がありましたー!


道がカーブしているところは岩が少しせり出して庇のようになっていたのですが、そこで何人かの登山者さんが休憩していらっしゃいました。
追い抜くためには崩れそうな崖沿いの部分を進まなければならず、ちょっと危ないなーと感じていました

そして、ちょうどすれ違う時に上からザザザザザーっ小石が落ちてきたんです!

かぶっていた帽子のつばに、ドドド・・・といくつもの小石がぶつかる感触がありました。
「危ない!」と頭をカバーして速足で通過しましたが、もしこれが大きめの石だったら・・・と思うと、背筋が凍る思いでした

怖い思いをしたので、できればスムーズに危険な岩場の道を通過したかったのですが、やはり渋滞があってなかなか思うようには進めませんでした

それでもなんとか前穂高岳から伸びる北尾根まで上がってくると、景色が変わって少しホッとしました。
細い道なのでゆっくり写真は撮れなかったけど、カワイイこの子が沢山いましたよー☆
ここまでずっとピリピリと神経を尖らせていたので、ものすごーく癒されました!


この辺りからは前後の登山者さんとも適度にばらけ、道も落ち着いてきたのでかなり歩きやすくなりましたー。
快適に進んでいきます!


そして、槍ヶ岳さんとも再会!!


こうして快適に進むこと数分で、屏風のコルへとたどり着きましたー。
このまま600mほど進むと屏風の耳へ行けるのですが、今回はそのまま上高地へ向けて下山することにしました。
屏風のコルから下り始めると、辺りにはほとんど人がいなくなり、とても静かになりました。
林の中の急な坂道を、ハイペースでひたすら下っていきます。

1時間ちょっと下ったところで、河原のように大きな岩がごろごろと転がる場所に出てきました!
岩に付けられたペンキのマークをたどって渡り、少し行ったところの大岩に、赤いペンキで矢印と文字が書いてあります。
ここが中畠新道分岐のようで、右手は山と高原地図 37 槍ヶ岳・穂高岳に「熟達者向」と書かれた松高ルンゼ、奥又白池へのルートになります。

見ているだけでもすごい迫力で、私たちには無理だなぁーなんて思いながら眺めていたら、女性を含めたグループの方が下りていらっしゃったのでびっくり!
すごいなぁと思いました

私たちはここから左手の徳沢方面へ。
辺りはまたすぐに木々に囲まれるようになり、やがて簡易舗装された雰囲気のなだらかな道へと変わりました。
ここまで来れば、登山は一段落。私たちは歩きやすい道をどんどん進んでいきました

やがて、林道と言えるような雰囲気の道になり、途中には関係者の方のものでしょうか、車も1台停まっているのが見えましたー。
ようやく下界へと近づいてきた感じですねー!


家にいる時はずっと山に思いを馳せているけれど、今は下界の喧騒や人々の生活の匂いがする場所が恋しくも感じます。
やがて、立派な橋が架けられているところまで出てきましたー。
道標がちょっと奥にあって見落としそうになりましたが、ここが新村橋のようですね。渡ります!

こうして対岸に渡ると、道の雰囲気は一気に変わりました。
良く整備された広い道には、多くの人々が行き交っています。

ここまでくればもう、遊歩道や散策路といった雰囲気。
辺りの緑を楽しみながら、どんどん進んでいきます。
そして10分ちょっとで、徳沢に到着しましたー!


私たちは徳沢園に入り、早速ソフトクリームを注文しました!

ああー、生き返る―(笑)

徳沢園で少し休憩をした私たちは、上高地へ向けて歩き始めました。
ここからの道は観光客の方も訪れるような、とっても気持ちの良い散歩道です。

途中、河原からはこんなに素晴らしい景色も眺められました。
私たちが4日間過ごした山々は、もうすっかり遠い場所になってしまったなぁ。

徳沢から1時間足らずで明神へ。
ますます人は増え、観光地らしくなってきましたー。
ここで少し休憩を取ってから、再び歩き出します。
本当に雰囲気のいい道ですねー!


私たちは最後まで景色を楽しみながら河童橋までやってきました。
そして、アルペンホテルでお風呂に入ります

数日ぶりのお風呂、しばらくシャワーをかぶりながら歓喜の声を上げてしまいました(苦笑)
そして、お風呂上がりにはお蕎麦を頂きます!
うーん、帰ってきたなぁー!



それから私たちは上高地からバスに乗り、新島々で乗り換えて最後はあずさで東京へと帰りました。
上高地でバスを待っている時に、観光客の方から
「登山をしてきたんですか?すごいですねぇ・・・」
としみじみと言われました。
この4日の登山では、きちんとご飯も食べて行動食もこまめにつまんでいたものの、体重が1日1kgペースで減っていたようです。(すぐ戻りましたけど・苦笑)
さらに、日焼け止めを塗ってはいたのですが、まるでヒマラヤ登山をしてきた登山家のようなサングラス焼けをしてしまっていたのでした

というわけで、下山直後の私はかなり野生人っぽかったと思います(苦笑)
これ以上の長い山行の際にはこれらのことが大きな影響を及ぼしてくる可能性もあるので、登山中の栄養補給と健康管理はもう少し工夫をしたいと思いました。
こうして、雄大で美しく、そして厳しい北アルプスのまっただ中で過ごしてきた4日間。
衣食住、そして自分の命も全て背負って、自分の足で歩き切ることができました。
北アルプスの大自然と向き合い、自分自身と向き合ったこの4日間は、自分にとって大きな経験、そしてかけがえのない財産になったと思います。
これからも常に勉強し、少しずつ経験を重ねながら、色々な山やコースへお邪魔していきたいと思います。
そして、元気で「ただいま!」と言える登山をしていきたいと思います。
今回も本当にありがとうございました!

【終わり】
2011.10北アルプス燕岳~大天井岳~常念岳~蝶ヶ岳~涸沢テント泊縦走登山(3)【3日目:涸沢編】
初日に中房温泉から燕岳~大天井岳まで、
そして2日目は大天荘から常念岳を経て、蝶ヶ岳までやってきた私たち。
昨日の大天荘テント場に比べると、ここ蝶ヶ岳ヒュッテテント場の冷え込みは幾分マシなように感じましたが、風は昨日よりも強くなりました。
風の力でテントの側面がたわみ、時々私の肩をぎゅーっと押してくるので、「誰かに押されてる!」と何度か目が覚めました

それでも、テントが壊れそうな雰囲気はなかったので、時々風に起こされながらもなんとか眠ることができたのでした

こうして迎えた3日目の朝。少し遅めに、5時過ぎの起床となりました。
早速お湯を沸かして、尾西の白がゆにフリーズドライのスープときのこを足した朝食を作っていただきます


ゆっくりと身支度を整え、テントを片付けると、そろそろ出発の時間。
気を引き締めて、今日もしっかり歩くぞ!と気持ちを登山モードに切り替えます

そして、最後にヒュッテのトイレを借りて出てきた時のこと。
稜線の東側に広がる光景に、私の目は釘付けになりました。
あぁ、これは・・・
なんていう景色なんだろう。

私たちの暮らすこの世界は、こんなにも美しい。
そして、この世界に生を受けて、ここにこうしていられることは、「奇跡」と言えるぐらいすごいことなんだと思う。
山には死と隣り合わせの危険も沢山あるけれど、私にとっての山は決して死ぬために行く場所ではなくて、生きることの喜びを実感するために行く場所なんだってことを再認識しました。
山に、全てに・・・ありがとう。
「よーし、それじゃあ出発しよう!

こうしてヒュッテを後にすると、足取り軽く歩き始めた私たち。
お腹の底から元気が湧いてくるような気がします!

ここからはいったん昨日歩いた道を少し戻って、横尾分岐から横尾へと下ります。
昨日までと同様に空はすっきりと晴れ渡り、景色は大きく開けていました。
目の前には今日も、槍~穂高の山々がどっしりと聳えています!
うーん、素晴らしいっ!!


何度も立ち止まって山の空気と景色を楽しみながら進んでいくと、やがて横尾分岐にぶつかりましたー。

ここからは横尾に向けて、一気に下ります!


岩ゴロゴロの道を下り始めると、間もなく樹林帯へと入りました。

陽射しや風を直に受け続けていた稜線の道から離れて、少しだけホッとした気分になります。
道はかなり急ですが、踏み跡ははっきりとしていて分かりやすいです。
石の多かった足下も徐々に落ち着き、土の道へと変わってきました。
樹林帯の雰囲気を楽しみながら、私はかなり速めのペースで下っていきました。
横尾までの標高差は約1000m。下っていくほどに空気が濃くなって力がみなぎっていくような、そんな錯覚すら覚えました(笑)
途中で、木々の切れ間に槍ヶ岳の見える場所が2箇所ほどありました。
さっきまで目線の高さにあったように感じられたあの美しいとんがりは、気付けば見上げるほど高く、遠く聳えているように感じられるのでした。
そうか、随分下ってきたんだなぁ・・・。
苔やらキノコやら木の実やら、色々なものに目をやりながら下っていくと、下から登ってきた登山者さん数組とすれ違いました。
それでもほとんど人に会うことはなく、とても静かな森の道でした。
やがて、こんな飛び石ならぬ飛び丸太?が現れましたー!

丸太の上をトントンと駆けていくと・・・
「わーっ!!



大きく開けた景色、整備された道、キレイな山荘、そして大勢の人々!!

そう、横尾に到着したのでしたー!

まるで大自然の中で暮らしてきた野生動物が文明の世界に飛び出してきたかのように、頭がクラクラとしてきます(苦笑)
ひとまず、ちょっと落ち着いて気持ちを切り替えようと、ザックを下ろして休憩を取ることにしましたー。
横尾山荘で冷たいドリンクを買い、行動食と一緒に頂きます。
そしてタオルで汗をぬぐい、日焼け止めを塗り直し、近くのトイレを借りに行きました。
ここのトイレが大混雑!初日の中房温泉の時のように、行列に並ぶことになりましたー

うーん、さすが人気の上高地!
30分ほど休憩を取って、だいぶ落ち着いてきた私たちは、いよいよ涸沢へと向かうことにしました。
涸沢は以前からずっと訪れたいと思っていた憧れの場所。真っ赤に色づいた紅葉のポスター写真が、ずっと目に焼き付いています。
今回は混雑を避けたために紅葉全盛期からは少し遅れてしまいましたが、まだ秋はとどまっていてくれるでしょうか。
それとも、もう冬がやってきているのかな・・・?
大きな期待とちょっとの不安を胸に、私たちは歩き始めました。
まずは大きな吊り橋を渡ります。
美しい森に清流、雄大な山並み。本当にこの場所は多くの人を惹き付ける魅力に溢れた場所ですね


これまでとは違い、多くの人たちが行き交う賑やかな道になりました。
アップダウンもほとんどなく、素敵な散歩道です。
とっても歩きやすかったので、私たちはかなりハイペースでどんどん進んでいきました!



やがて、本谷橋にぶつかりましたー!

先ほど渡った橋よりも、ずっと小さな吊り橋です。

周辺の岩場には大勢の登山者さんたちが休憩していましたが、私たちはそのまま進むことにしました。
本谷橋を渡ると道は登山道らしさを増してきて、傾斜もきつくなってきました。
少しずつ足取りが重くなってきたのを感じますが、こんな景色が現れて、疲れを吹き飛ばしてくれましたー!
うわぁーっ!!すごーいっ!!



大迫力の岩壁に、秋の色が乗っていてとっても素敵な光景です!

ここから先は周囲の木々の背が低くなり、美しい秋色に染まった素晴らしい景色を眺めながらの登りになりました。
ここは本当に、美しさと雄大さが共存する感動的な光景ばかりで・・・
足を止めてずーっと眺めていたかったけど、あまり広くはない道に多くの人々が行き交っていたので、なかなか自分のペースで立ち止まることができませんでした

進行方向が同じ団体さんは、私たちが追いつくとすぐに道を譲って下さったので、とてもありがたかったです!
ですが、かなり大きな団体さんが多く、一度抜かさせてもらうと一息に数十人を抜いていかないといけないので、呼吸困難になるかと思うほど疲れました(苦笑)
しかも、団体さんが連続している時なんかはもう・・・ヒエエエェー

こうして息も絶え絶えになりながらも、人々の切れ間を待って何枚もシャッターを切りました。
ああ・・・もう、ずっとずっとず―――っとこの場所に佇んで、ただひたすら眺め続けていたいような、そんな素晴らしい景色です


しかし、景色が開けて陽射しを直に受けるようになると、暑さと疲労がずっしりと私の背中にのしかかってきました。
蝶ヶ岳から下る時や、横尾から出発した時の元気はすっかり底をついてしまったようです

そこで、他の人の邪魔にならないよう日陰で休める場所を見つけて、少しの間ザックを下ろして休憩を取りました。
ふー、暑いなぁー!


しかし、この頃にはもう涸沢はあと少しのところまで来ていました。
休憩を終えて歩きはじめると、間もなく「涸沢ヒュッテ」の案内標識にぶつかります。
暑いしきついけど、あとちょっとで到着だね!
振り返ればこの絶景。素晴らしい景色に元気を分けてもらいながら、ゆっくりと登っていきました。

そして・・・涸沢ヒュッテに到着ー!!


噂通りのキレイで大きくて立派な小屋ですねー。
私たちは小屋を通り抜けて、テント場の方へ進みました。
すると、ポスター写真で見たままのあの景色がどーんと目に飛び込んできましたー!



「わぁぁぁーっ!!キレイっ!!


涸沢の秋は今や残り火のように色褪せつつありましたが、それでも十分に感動的な光景でした。
どこを見回しても素晴らしい景色。私は疲れも忘れて、ぐるぐると辺りの景色を見上げ続けました。
すごいなぁ・・・!!


ようやく気持ちが落ち着くと、私たちはテントの設営にかかりました。
ここ涸沢のテント場はとにかく広くて、500張ほども張れるのだそう。それでも、紅葉真っ盛りの連休中は、なんと1000張を超えるテントが張られたのだそうです!

私たちは時期を外していたことと、到着時間が早めだったこともあって、テント場はかなり空いていました。
というわけで好きな場所にテントを張れたのですが、ここはごつごつの岩場なので、薄いシートでは太刀打ちできませんでした

なるべく平らな場所を見つけて、丁寧に石をならしてテントを張りましたが、中へ入ると足がイタタタ・・・

というわけで、テントの受付が開始されてから、下に敷くマットをレンタルしましたー!
分厚いマットのお陰で、石のゴツゴツが気にならなくなりましたよー。これで今夜もしっかり眠れそうだね

テントの設営が終わると、私たちは涸沢ヒュッテへ向かいました。
今回の行程中、どこかで1回は山小屋ご飯を頂こうと決めていたんです。
今日がその時!早速カレーとおでん、そして温かいミルクティーを注文しましたー!


そして、靴を脱いで上がるテラス席で、温かい食事を頂きました。
涸沢の素晴らしい景色に囲まれて食べるご飯はめちゃめちゃ美味しい!胃袋と心に沁みました



実は、当初の計画ではここ涸沢に2泊して、奥穂高岳か北穂高岳へ登ることを考えていました。
天候などの不安もあって、入山直前に涸沢1泊で下山する計画に変更をしていたんです。
ここに来てみると、「登ってみたいなぁ」という気持ちが一瞬心の中に湧いてきました。
ですが、実際の標高差以上にここから見上げる岩壁は高く、稜線は険しく遠く感じました。
そうだね、私はまだこの先へ登る時ではないんだ。
それに、燕岳から蝶ヶ岳までの稜線歩きを満喫できたし、ここ涸沢の紅葉に出会うこともできたし、もう十分満足です!

そう考えたら、なんだかすごくすっきりとした気持ちになりました

こうして私たちは食事を終えると、テントに戻りました。
ごろりと横になってテントの入り口を開けると、目の前には美しい涸沢の景色。
うわー、なんていう贅沢でしょう(笑)
私たちはのんびりと景色を眺めながらお茶を飲んだり、付近を散策して写真を撮ったりして過ごしました。
そして日が落ちてきた頃、今回の山旅最後の晩ごはんを作ります!

今日は贅沢に、フリーズドライの親子丼(小さめどんぶりシリーズ 親子丼)と麻婆なす丼(小さめどんぶりシリーズ 麻婆なす丼)を使った二色丼とお味噌汁!!
これはかなり豪華で美味しかったですー!!


そしてトイレに立ったついでに、夜の涸沢を少し散歩することにしました。
この辺りは周囲を高い岩壁に囲まれているせいか、風もほとんどなくとても穏やかでした。
寒さは変わらず厳しいですが、ダウンや中綿入りのズボンの上からレインウェアを羽織れば、なんとか外で過ごせるほどの気温でした。
色とりどりの光に包まれるテント場の上には、満天の星空が広がっていました。
月明かりが辺りの山並みをくっきりと浮かび上がらせて、とても幻想的でした。
その時撮った写真を、Photoshopで少し明るくしてみました!
こんなに素敵な世界の中で、私は過ごしていたんですね



だいぶ身体が冷えてきたので、私たちはテントに戻り、シュラフにもぐりこみました。
明日はついに、山を下りることになります。
これまでの3日間はすごく長かったようにも感じられましたが、この世界と明日でお別れするのだと思うと、とても名残惜しい気持ちにもなりました。
最後の夜、ゆっくり休んで、明日は元気で「ただいま!」を言えるように頑張ろう。
こうして眠りについた私には、明日も険しい道のりが待っていたのでした。
【次回へ続く】