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2010.07宝永山登山(登頂なし)(2)

宝永山登山、(1)の続きです。

富士宮口六合目の山小屋を越えて、大きな大きな富士の山腹を回り込むように進んでいく私たち。
道中みかけたカワイイ花

するとそこに、信じられない光景が飛び込んできました。
砂礫の斜面に突如ぽっかりと開いた大穴・・・それはまるで月のクレーターのよう。
これが、宝永火口かぁ!

「すごーい!」
「でっかーい!」
私たちは歓声を上げながら、しばらく写真撮影に興じます(笑)
宝永火口!

ところが、ここに来て少し気になることが出てきました。
風が強い・・・。ここまでの道のりでも多少の風はあったと思うのですが、火口を前にしたこの場所では、着ていたウィンドブレーカーがばたばたと音を立てるほど強い風が吹いていたんです。
事前に調べた情報によると、宝永山の山頂付近はいつも風が強いみたい。それが、この場所で既にこの強風となると・・・。
この先に待ち受けているものに一抹の不安を覚えながらも、私たちはストックを装備し、火口へ向かって足を進めていきました。
火口の底へ向かいます

火口の底まで降りると、周りを高い壁に囲まれているからか、風はいくぶん落ち着きました。
ここにはベンチやテーブルがいくつか設置してあって、休憩するのにはちょうど良さそう!

でも・・・巨大な岩が至る所にゴロゴロと転がっているんです。これって、落石が多発しているってことだよね
落石・・・・厳重注意
これは「落石多発 厳重注意」と書かれた看板・・・のはずなんだけど、なぜか半分ちぎれて、その先の道の真ん中に大きな岩がごろり。
なんだかものすごくリアルです

宝永山の山頂は、ここから火口の縁までよじ登り、稜線沿いに少し進んだところにあるみたい。火口の縁に上がっていく登山道のラインがはっきりと見えているのですが、かなりの急斜面に思えます。
でも、ここからの道は富士山登山のシミュレーションにはぴったり。
風や落石のこともあるので、私は友達に
「とにかくゆっくり、行けるところまで行ってみよう。」
と声をかけて登り始めました。
火口を登ります

ところがすぐに、私たちはこの道の登りづらさにびっくりさせられるのです。
これまでほとんど平坦な道だったので、快適に歩くことができたのですが・・・傾斜が急になったとたん、地面を覆う火山性の石ころたちが踏み出した足にまとわりつき、ずるずると私たちを引きずり下ろそうとするんです。
まるで、アリ地獄にはまったアリンコみたい。

点々と残る先行者たちの踏み跡を頼りに、出来るだけ平らな足場を探しながら足を進めていきますが、1歩足を出せば半歩ずり下がり・・・なかなか前へ進むことができませんでした。
ともすると、気ばかりが急いて必死になってしまう道。でもこういう時こそ落ち着いて、ゆっくり着実に足を進めて行かなきゃ。
無意識にペースアップしてしまう友達に「もっとゆっくり!」と声をかけ、「もし私のペースが上がってたら注意してね」とお願いしながら、とにかくゆっくりゆっくりと登っていきました。

振り返れば、遥か眼下に雲の塊。
雲を見下ろす

そして顔を上げれば、こんなに荒涼とした景色が広がっています。
まるで月の世界
「まるで私たち、月の上を歩いているみたいだね」

こうして火口の底から高度を上げていくにつれ、危惧していた通り風は徐々に強さを増してきました。
目に砂埃が飛び込んできて、私たちは慌ててサングラスをかけます。
そして私は、サングラスの似合わない友達の顔を見て、大爆笑(笑)
その友達はと言えば、ハードコンタクトレンズの目に砂埃が入って、片目で号泣(苦笑)

その時、パラパラっと手の甲に雨粒が落ちてきました。
しまった・・・ついにきたか。
私はすぐにレインウェアを着るよう友達に伝えて、ザックから取り出したゴアテックスのジャケットを羽織りました。
今日はfinetrack ストームゴージュパンツを穿いているから、今はまだ上だけでいいかな・・・

などと考えていたら、
「あれー?雨、降ってる?私全然感じないけど。」
風で暴れるレインウェアにてこずりながら、友達が言いました。
「う・・・ん、今は確かに雨、降ってきてないね?おかしいなぁ、さっき手の甲に水滴がいくつか落ちてきたんだけど。」

「あー・・・。それって・・・

私の涙だと思う」

「えーっ!!何よそれ―――っ!!やだ――っ!!

彼女の流した涙が、風に煽られて飛んできたなんて・・・!?
にわかには信じがたい話です。。
それに、そんなモンが手についたらやだ。(苦笑)

ともあれ、幸いなことに雨は今のところ降って来ていないよう。
私たちは防寒と防風を兼ねて、レインジャケットを羽織ったまま再び歩き始めました。

やがて、直進する道と左手に折れる道の分岐が現れました。
道標などは何もないのですが、登山地図には「登りは左手に折れる道を進んだ方が歩きやすい」って書いてあったはず。
私たちは少し考えて、左手の道へ進むことにしました。

確かにこれが正解。直進する方は足を取られやすく歩き辛い道でしたが、こちらの道は傾斜が緩いせいか比較的歩きやすかったです。
でもそんな道もそう長くは続かず、再びもう一方の道へ合流しました。とたんにずるずると滑る道

でも・・・ここまできたら、山頂まではあとちょっと。
すぐ上に見えている火口の縁、あそこに上がって、くるりと右手に向きを変えて、なだらかな稜線伝いを歩けばいい。
右手後方を振り返ると、山頂と思われるピークが目に入りました。
あと10分・・・いや、15分で登頂だ。

しかし、ここにきて風がさらに強さを増しました。
ここまでの登りでは途切れ途切れに休みながら吹き付けていた風が、今や休みなく吹き荒れています。

稜線まではあと少し。あの稜線に上がれば、道は格段に歩きやすくなるはず。
だけど・・・稜線に待っているのは、もっと激しい「暴風」だ。

私はあと15分でたどり着くはずの山頂を振り仰ぎました。
滑らかに続く稜線の先、遮るものの何も無いその場所は、静かに佇んでいるように見えました。
それはいつでも、いつまでもずっとそこにあるんだと、思いました。
そこに立つのは、今じゃなくてもいいんだ、と。

「ねぇ!ちょっと!」
風の音にかき消されそうになりながら、私は前を行く友達に声を張り上げました。

「風が強すぎる。このまま稜線に出たら、もっと風は強くなって・・・危ないと思うんだ。だから・・・


今日はここで引き返そう!」


振り返る友達に、私は一息に続けました。

「ほら、向こう見て。あの先にあるのが多分山頂なの。ここから見えるんだよ!
だから、ここで山頂をバックに写真撮ろう。それで戻ろう!」

「うん、分かった!」

私たちは強風の中、足を踏ん張ってお互いに写真を撮り合いました。
強風に耐えながら記念撮影!
そして一旦その場に腰を下ろして、靴紐を締め直し、ストックの長さを調整し、装備をきちんと整えてから再び立ち上がりました。
すぐに強い風がゴォッと体当たりしてきて、思わずよろめきそうになります。

「火口の底まで行けば風は多少落ち着くと思う。ひとまずそこを目標にしよう。少しペース速めに行くね!」
登りではあれだけ私たちを苦しめたこの道ですが、下りは砂走りみたいにいけるんじゃないかなぁという予感がしていたんです。

実際に足を踏み出してみると、なるほど適度に足が滑って、膝の負担も少なく滑らかに足を運べます。

「わぁー、これ、歩きやすいねぇ!」
「うん、面白い!」
私たちは、時間をかけてゆっくりゆっくり登ってきた道を、一気に下っていきました。

この時、私は言いようのない爽快感に包まれていました。
確かに、山頂はすぐそこに見えた。もう少し頑張れば手が届いたのかもしれない。
だけど、登頂を目前にして引き返すことの残念さ以上に、「引き返す勇気」を持つことのできた自分が嬉しかったんです。

今までいつも心のポケットにはしまってた、でも一度も使うことができなかった。
この「引き返す」という決断ができて初めて、私は登山者として少しだけ成長できた気がしたんです。
まだまだ、ホントにまだまだだけどね。

実際に引き返してみて思ったのは、登頂できなかったことは私にとって、「敗退」とか「撤退」って表現されるものではないんだということ。
私は山に闘いを挑みにきたわけじゃないし、山のてっぺんにあるあの柱ひとつがその山の全てでもない。
もちろん、登頂できたらとっても嬉しい。でも、たとえ登頂できなくても、山は楽しい!
快適に下っていきながら、私はそんなことを考えてすごく幸せな気持ちになりました

こうしてあっという間に火口の底へと戻ってきた私たち。
火口の底へ戻って来ました~
確かにまだ強い風が吹いてはいるものの、先ほどに比べたら「そよ風」と言っていいぐらいに落ち着いています。
「じゃぁ、ここでちょっと休憩~♪」
私たちはベンチに腰を下ろしました。

今回はガスが使えない代わりに、サーモスにお湯を入れてきたんだよね。
私はカップをふたつ取り出して、一方にインスタント味噌汁、もう一方にキャラメルラテをいれました。
そして、朝コンビニで買ってきたアンパンを出して・・・富士山のお腹の上でティータイム☆

「わぁ~、これいいじゃん。ちょっと写真撮ろう!」
私たちがカメラをごそごそと取り出していると、そこに突風が・・・
さすがに軽さを重視した登山用のカップたち、風に煽られてテーブルの上をススーッと滑っていくではありませんか

「ギャ――――!!!」
「ちょっと、押さえて――!!」

こうしてすったもんだの末、何とか収めた写真がこちらです(苦笑)
ティータイム♪
作った時はせっかく温かかった味噌汁とドリンクは、私たちの喉を通る時にはすっかり冷え切ってしまったのでした

この日の気温、地上の予報では30度近くあったと思いますが、長袖シャツ、半そでシャツを重ね着して、その上にレインウェアを羽織ってもなお、じっとしていると指先や足元からじわじわと寒さがにじんできました。
標高が100m上がると0.6度気温が下がることから単純計算しても、恐らく気温は15度いかないくらい。風速1mで体感気温が1度下がるというから・・・
そう考えると、ここからさらに1,000m上にある富士山頂はどれだけ厳しい気象条件なのかを思います。

「やっぱり防寒はしっかり準備しないとだね。カイロも持っていこうかな。」
「砂対策で、目の周りをしっかり覆えるサングラスも必要だね~。」
私たちはこの日分かったことをお互いに確認しあいました。

さて・・・と。この場所にあんまり長居をすると落石が怖いし、結構寒くなってきたのでそろそろ下山しよう。
片づけを済ませ、もう一度靴紐を締め直すと、私たちは駐車場を目指して歩き始めました。
最後に振り返って、宝永山の姿を目に焼き付けます。
宝永山を振り返る

そして私たちは火口の底から上がると、なだらかな道を六合目まで。吹き付ける風にも身の危険を感じるほどの強さはなく、とても歩きやすいです。
思わずスピードアップしてしまいそうになりますが、今回は富士山の練習も兼ねているので、意識してゆっくりペースを心がけるようにしました。
そして、六合目の山小屋へ到着~。
六合目の山小屋たち
ここで私、自分の顔が砂埃を浴びて真っ黒になっていたことに気づきます(苦笑)
マスクも持って来た方が良さそうですね~・・・。

そしてここから五合目の駐車場までは、さほど時間はかかりませんでした。
駐車場に着いて車のドアを開けたとたん、空がこれまでこらえていたものをどっと吐き出すようにして、大粒の雨をばらばらと落とし始めたんです。
慌てて車に飛び乗る私たち。
みるみる霞んでいく窓の外を眺めながら、こう思うのでした。
「私たちが下山するまで待っていてくれたのかな・・・。山の神様、ありがとう。」

今回は短い行程でありながら、高山特有の厳しい気象条件や、火山ならではの歩きにくい砂礫の道を体験することができ、とても有意義な山行になりました。
そして私自身、登山者として多くのことを学ぶことができました。

宝永山は行程が短いながら、富士山の息遣いを肌で感じることのできる素晴らしい山です。
富士登山の予行演習にも最適ですし、この山をメインの目的地に据えての登山(ハイキング)も十分に楽しめると思います。
ただし、装備は万全にした方が良さそうですね。

富士山は観光地だって言われることもあって、確かにある意味ではその通りだと思います。
だけど、やっぱり富士山は「山」なんだなぁ。しかもものすごくおっきな山。
登山は、その大きな大きな自然のふところに、この身ひとつで飛び込んでいくんだってこと・・・その意味を、同行の友達はきっと今回の山行で理解してくれたと思います。

そして私自身も・・・無理に大きな段差を乗り上げようとすると痛みが走るものの、登山、下山とも通常の歩行に支障がないことを確認できました。
富士登山、そしてその後に続く遠征登山、縦走登山。全て予定通りに決行します!

さぁ、この夏も忙しくなるぞ。

【終わり】

(自分用メモ)
◆今回のルート
駐車場(8:11)→富士宮口登山口(8:19)→閉鎖中のトイレ(8:26)→山小屋(8:59)→宝永山第一火口の底(9:56)→引き返すことを決定(11:15→宝永第一火口の底(11:48-12:18)→山小屋(12:45)→駐車場(13:13)

◆周辺の天気予報
静岡県富士宮市粟倉周辺のYahoo!天気

◆水場とトイレ
トイレは登山口入ってすぐ(登山当日はまだ閉鎖中)と、六合目山小屋にある(有料200円)。駐車場の辺りにお店などもあったので、そこにもトイレあるかも。
水場はないけど、駐車場付近や山小屋で飲み物が買える。ただし地上より値段が高め。
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Comment

2010.07.08 Thu 08:26  |  宝永登山!

はじめまして!

宝永山山頂を目前に、引き返した勇気!実に素晴らしいじゃないですか。

自分も見習うところです!(子供背負って宝永山登った時は疲れました)

2010.07.08 Thu 23:46  |  

はじめまして。

登頂だけでなく、山の楽みはいろいろですよね。
下山を決められて正解だったと思います。

  • #-
  • サニー
  • URL

2010.07.11 Sun 00:03  |  hiro様

hiro様、こんばんは!コメントありがとうございます。

hiro様も宝永山登られたんですね。それにしてもお子さんを背負って登られたとは!かなりハードでしたね・・・。

私も今度は山頂に立てたらいいなと思いますe-454

  • #-
  • yamajoshi
  • URL

2010.07.11 Sun 00:19  |  サニー様

サニー様、初めまして!ブログご訪問&コメントありがとうございます。

おっしゃる通り、山の楽しみは登頂に限らず、色んなところにあると私も思います。
これからも自分なりのスタイルで、山歩きを楽しんでいきたいですe-454

2010.07.21 Wed 01:28  |  来週チャレンジします!

はじめまして!

来週、宝永山に友人7人でチャレンジします。

11月は火口を見にきましたが、
その時は立っているのがやっとの強風でした。

来週の宝永山も、
8月5日に予定している富士登山の練習を兼ねているので、
ぜひ登頂して、
出来れば御殿場ルートの様子も見てみたいなぁと
思っていましたが、
引き返す勇気も忘れずに楽しんできたいと思います。

体感温度やマスクが必要なことなど
とても参考になりました。

また勉強しに来ますね♪


2010.07.22 Thu 01:00  |  とりまとめご返信(5)

>Poco様
初めまして!コメントありがとうございます。
来週宝永山ですか~!天気が良いと素晴らしい景色が楽しめそうですね♪
普段から風の強い場所のようですが、当日は落ち着いているといいですね。
時期的に富士宮口からの富士山登山の車が多そうです。もし車で行かれる場合は混雑状況要チェックですね。
それでは楽しんで来て下さい!よい山を♪

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